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”第3のビール増税”に関する論調への懸念

仕事において、お酒を取り扱うため、酒税法も度々気にしています。


以前にはこんなnoteも書かせてもらいました。


ただ、10月が近づくにつれ、このようなネット記事が散見されるようになりました。


これは、酒税法改正により、第3のビールが発泡酒と同じ税率になる(第3のビールの増税)ため、
増税前の買いだめを報じたものです。


確かにこれ自体、事実上値上がりのため、一般消費者の当然の行動です。



しかし、一方でビール自体の税率が下がることについては、あまり報じられていません。


ここ1・2年で、国民負担が増え、またモノの値上がりが続いたため、それと同列に報じられているように読み取れます。


これに関しては、

税収を上げるための改正

と論じるのは、この法改正自体の理解に乏しく、ビール・発泡酒・第3のビールへの理解も乏しい

と言わざるを得ない。

強い言葉でいうならば、バカの考えである。


そのため、”バカでも”わかりやすいように、説明しようと思います。


酒税法改正の概要

そもそも、増税・減税といっている酒税法改正の内容を説明するのですが、

財務省にページがあります。

平成29年度改正と呼ばれていますが、2019年度に段階的に酒税の税率を調整していくことが定められました。

税率においては、


2026年10月に向けて、
・ビール・発泡酒・第3のビール
・清酒(日本酒)・果実酒(主にワイン)
の税率の統合

チューハイの税率調整(増税)


がされ、3年おきに、税率を変更していくものです。

平成30年のタイミングで、ビール・発泡酒周りの定義の改定
(ビールの定義の緩和)
がありましたが、今回の話とはあまり関係ないため、ここまでとします。



なぜ改正することになったのか

ではなぜこんなことになり、第3のビールが増税することとなったのか。

厳格すぎる酒類の定義

一番の理由は、”厳格すぎる”酒類の定義があります。

下では、今現在の酒類の税率が記載されています。

特に今回問題となった、ビール系に関してはこのようになっています。


ビール系といえど、5種類の区分と税率が存在します。


なぜこういうことになったかというとお酒の歴史の話になりますが、
本を正せば、ビールの定義があまりにも厳しすぎた点です。


それは、以前のnoteでも書いていましたが、

酒税法上のビールは、麦芽比率や水・麦芽・ホップ以外の原料について、強烈な制約があります。

そのため、海外産ビールで果実系を多く含んでいる場合は、酒税法上では”発泡酒”になるとことを紹介しました。


ただ、厳しい定義にした上で、低い酒税であれば、特に問題にならなかったものの、ビールに高い税率を設定してしまったがために、

この”ビール”の定義から外れることの”旨味”ができてしまったのです。


その最たる例が、2000年代に幅広く認知されることとなった、低税率を狙った”発泡酒”です。


ただ、国はこの”ビール”の定義を変えるのではなく、

抜け道となったお酒を狙って増税することを繰り返します。

2003年の改正で、
上で述べた、低税率を狙った発泡酒を狙って増税しています。

2006年には、このころ台頭していた、第3のビールへの適切な課税を狙って、
新たに項目を増やしています。


つまり、ピンポイントで狙いすぎたがために、ビールメーカーとのイタチごっことなり、税制が複雑化したのです。


それを正すために、一度リセットし、ビール系は一括りに定義し、同一税率を目指したのです。


ビール系飲料を飲む方の大半の思考は、

「ビールよりも(税率が)安いが、味が変わらないから発泡酒等を選ぶ」

だと思います。
つまり、複雑化していったイタチごっこに終止符を打ちつつ、ビールの税率を引き下げようということなのです。

ビール系以外での歪み防止

前段で、制度設計によって複雑化していったことを述べましたが、

結局は、低い税率の酒類に流れやすいというのが根本にあります。
もちろん、嗜好の変化は当然考えられますが、
ビール税率が平準化していくと、チューハイなどに流れることは想像できます。

改正が決まった前後に、レモンサワーのブームが来ることになります。

もちろん、嗜好や税率に関係なく原価の安さによって火がついたものですが、
あまりに偏りすぎると問題は大きくなります。


また、醸造酒の中でも、清酒と果実酒で税率が異なっており、一本化するのも歪みの防止、簡便化とも言えます。


最後に

第3のビールばかり世間的には、取り上げられていますが、

税制的には、ビールと清酒は減税になり、ワインは増税になります。


ただ、これについて直近で報じたものは、あまりありません。
減税については、昨今の原料費人件費の上昇があり、減税分と相殺されてしまうため、価格が下がらないことはあります。

ビール減税

日本酒

ワイン


この辺りのことについて、情報があまり出回っていないことも今回のnoteの"副題"でもあります。


以上になります。ありがとうございました。


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