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電気も雑誌も値上がり。『セリア』の台頭で宝島社は今後どうなっていくのか

〈初めに…こちらの記事は完全にただの雑誌好き生活者の視点です〉


近頃めっぽう電気代の値上がりが話題な中、あらゆるジャンルの物価が上がり続けて、毎月最高値を更新するような昨今。

プライベートで使っているメールアドレスに毎日大量に届くメルマガを捌いていたところ、たまたま目にした画像に手を止めた。

電気代も上がるが雑誌も値上がりしていた

暮らし系では割と温度が高すぎず低すぎず、安定していて、デザインも記事もとてもよいマガジンハウスの『& Premium』

目に飛び込んできたのは、折りしも通算でNO.111を数える、ゾロ目の、縁起のいい号でしたが。

マガジンハウスのメルマガを登録しているので、毎月数分、あるいはメールを開かない場合であれば最短でもメールリストから左にスワイプして削除する0.3秒くらいは認知しているコンテンツである。

少し補足すると、毎日100件ほど届くメルマガの類の大半は、上記のようにメールの発信者とタイトルだけ一瞥してスワイプ消しするのだが、マガジンハウスは結構開いてざっと目を通してから消すことの方が多い。これ、フォローになってんのか。

その、毎月のお知らせでタイトルは見てチェックしていたはずが、今回はたまたま金額が目に入った。そしてちょっと怯んだ。


「& Premiumも、920円か…」

このところすっかり雑誌を買わなくなっていたので、金額の上昇を久しぶりに実感したのだった。

わたくし、元々無類の雑誌好きでして、10代の頃は本屋でバイトしていたくらい。
なのでますますジャンルを問わずあらゆる雑誌に詳しくなり、その流れがあってかなくてか大人になり、雑誌制作やエディトリアルデザインに縁が繋がって行ったりしたものでした。

『& Premium』も780円くらいの感覚だったのが、いつしか900円台に。

女性誌で1000円超えは確か宝島社が初か

この手の月刊ファッションやカルチャー雑誌で初めて1000円を超えたのは、宝島社の付録付きファッション誌が最初だったと記憶している。

出版不況と言われる中、梨花が表紙をつとめて100万部売り上げを叩き出した『sweet』。そこからファッション誌は宝島社が一人勝ちみたいな時代がしばらく続いた。なので多分だけど、初の1000円超えは『sweet』だったんじゃないかな。

何故そんなに鼻息荒いかというと、ほんの数年前までは、毎月3万は雑誌を買っていた。半分仕事、半分趣味。5年前くらいまでだったか。
なので、当時は概ね雑誌の価格と発売日は体に染み付いていたほど。
「この雑誌が出たからもう月末か」と、これまで雑誌の発売日で1ヶ月のリズムを確認していたような私ですら、買うことがなくなっていった。いった、というか今ではもはや皆無。

今でもジャンプとか少年漫画系ならその傾向は継続しているかもしれないけど、雑誌の発売日を楽しみにしていたサイクルってものがあったわけですよ。

じゃあ、今それと同じような、暮らしに密着したサイクルってあるだろうか?と考えると、タレントや有名一般人(一般なのに有名人てなに?)のyoutube配信やインスタライブへと、置き換わったりしているのだろうと思う。

テレビドラマだって、TVerになって自分のタイミングで視聴しているし。

時代の移り変わりと言って仕舞えばそれまでだし、ここまでデジタル媒体が日常に浸透していけばその分押し出されていくものも出てくる。
携帯電話の台頭で減って行ったNTTの電話回線みたいなもんで。

『d magazine』で雑誌はさらに手軽に

ちなみに私は『d magazine』をサブスク契約中。
確かに、『d magazine』を契約した頃から、物理での雑誌を購入しなくなり始めたので、結果、紙の雑誌からデジタルに移行したというのが個人的に買わなくなった大きな理由なのかもしれない。

ただ、サブスクし続け早6年くらい経つのだと思うのだけど、最近それすら見ていない。この世にコンテンツが増えたせいなのだろうけど、それでも『d magazine』のメリットは大きいので一応整理しておく。

『d magazine』のメリット① 1ヶ月440円

実際のところアプリを一度も開かないで終わる月もある。けれど、この価格を引き落としになっていると、ほとんど支払っている自覚もない。ほとんど見ないけれど、あると便利なので今のところ解約するつもりもない。

『d magazine』のメリット② 物が増えない

物理的に物が増えないので、購入している実感もないし、買ったけど読まなかった、とか、読まなかったのに捨てるのか、、などというあらゆる摩擦が皆無なので楽。

『d magazine』のメリット③ 小説など活字は読みづらくても、雑誌ならストレスフリー

なお、個人的にKindleなど電子書籍はどうにも合わなくて使わないクチなのですが、雑誌は基本的に写真などビジュアルで情報を伝える媒体。
なのでスマホやPCとの相性抜群であった。ということか。

『d magazine』の宣伝みたいになってしまったけど、そういうつもりではなかった。雑誌好きが雑誌の将来を案じていたはずが、完全に雑誌を裏切ってるじゃねえか、みたいなことになってしまっていた。

サブスクだって出版社や雑誌の応援になる

ただひとつ、『d magazine』など雑誌のサブスクも、それなりに出版社に利益が入る仕組みにはなっているので、少しばかりか応援にはなっていると信じている。
それこそ、テレビ局がTVer頼みになっている今の状況を見れば、遠からず同じような仕組みなのだろうと想像できる。

今後、宝島社はどっちへ舵を切るのか

雑誌が売れないという話は今に始まったことではなくてそれこそ10年以上まえから言われ続けていること。ちょうどロスジェネ世代の『失われた10年』が10年で済まずかれこれ20年…まもなく30年と終わらないのと同じである。あ、ごめん、同じかどうか不明だが。

雑誌出版業界ではいくつかマイルストーンがあるのだが、『エビちゃん』フィーバーの後に来たのが宝島社の『付録』フィーバー。付録欲しさに雑誌を買うという逆転現象が起き続けた。そう、かの『ビックリマンチョコ』と同じ構造である。
もはやどっちがメインかわからないあの状況。

すっかり雑誌界隈から離れておったので、久々に宝島社のサイトを覗いてみた。

相変わらず、付録がどどーんである。

宝島社は、付録フィーバーで爆発的に存在感と売り上げを伸ばし続け、そこで得た原資で(?)定期刊行のファッション誌にとどまることなく『ブランドムック本』というジャンルを生み出し(既にあったのかもしれないが、揺るがないものにした)、その専売特許でさらに「ムック本=宝島社」の認知を波及させた。定期刊行は月に1度なので、発行機会を増やすのが売り上げを増やすに直結するわけなのです。成功した企画で事業を拡大していく、まさに企業体としてはお手本のような展開である。

付録を欲しがる世代は「主婦層」「40代以上」

それで、だ。
どの業種業態でも同じアプローチが未来永劫続くわけではない。
雑誌も売れる世代は正直決まっている。それは『sweet』を100万部に押し上げたあの世代。あの世代がバブルを起こせたほぼラスト世代である。
その世代が『very』世代になり、そしてさらにお姉さん雑誌に移り、シニア雑誌が活況なのはそういうことなのだ。

付録がつく雑誌は主なターゲットが「主婦層」もしくは「40代以上」に絞られつつある。『sweet』や『mini』はその限りではないが、そもそも、宝島社に限らず、若い世代向けの雑誌が減っている。10代20代は雑誌で情報を得ない。インスタもしくはTikTokなんだろう。

安くてかわいいは『セリア』にあるじゃん

そして、宝島社の金の卵である付録のライバルは、同業他社の付録ではない。いやそういう時代もあった。
宝島社の成功を追って、各社こぞって付録付きの雑誌を売り出した。しばらく切磋琢磨期間を経て、今では結局残ったのはやっぱり宝島社くらいではなかったか。その大戦争をかい潜ってきたので、宝島社の胆力はすごいのだ。

付録は、ブランドコラボや市販品にはないオリジナリティと程よいかわいさ、ちょうどいいチープさなどが女性の心理にはまってブレイクした。
のだが。

今、ほぼそれに近い品物が、100均にある。

『ダイソー』にもあると思うけど、特に雑貨性の強いアイテム開発に強いのが『セリア』だろう。いわゆる小中高生女子にもてはやされたファンシーショップの類の雑貨店が今壊滅したのは、ひとえに『セリア』の台頭にある。と言っても過言ではない。
実際に、近所にあったショッピングモールで広い敷地を有していたファンシー雑貨店が閉店直後、セリアが開店した。文字通り食われとるやんけ。。

100均で雑貨に限らず日用品、化粧品、園芸道具から手芸道具まで「こんなの10年前には専門店で1000円以上したよね…??」というバリエーションの幅広くなんでも揃っているのは皆様ご存知の通り。

コストプッシュ型のインフレ真っ只中の日本で、これからの出版は

ただでさえ人口が減りつつあるこの国で(いきなり主語がでかくなってきたな…)、『小学一年生』だか四年生だか六年生だか(調べてから言えよ)が数年前休刊になったり、要するに、頭数が減ってきているのは確実。

その上、冒頭にもあるように電気代が爆上がりしたり、毎月食料品が何かしら値上がりしたりと、インフレしていくのに給与が上がらないという『コストプッシュ型のインフレ』という最悪の状況の日本で、これから企業はどうなっていくのか。

いわゆる『可処分所得』がゴリゴリ削られている今。生活コストが上がっている中で、1000円の雑誌を買って読む人がどれほどいるか。
情報だけならネットにいくらでもある。

ネットではできないチャレンジングな贅沢企画が雑誌にはある

雑誌って買われても、そのうちの2割くらいしか読まれていないというのが一説にあるそうで。でもまるっとパッケージで買うので、残りの8割分の利益でチャレンジングな企画ができる。
1ネタずつ購入できるネットコンテンツにはできない収益の仕組みがあるのだとか。一方で、本が売れなければそもそもそのチャレンジすらできなくなる。

雑誌好きとして、雑誌作りをしてきたものとして、雑誌を応援したい。

節約ムーブで言えば、今すぐ読まないサブスクは解約しろよって話。
だがしかし、雑誌好きの魂をまだ完全に失ったわけではないわたくし(ゾンビに噛まれたけどまだ人間の意識を残している状態みたいな言い方すな)、もうしばらく雑誌のこれからも追っていかねばならないという使命感を持って『d magazine』は契約を続けていこうかと思います。

なんの決意表明だよ。


もしもサポートいただけましたら、私もまた他のどなたかをサポートしてサポートの数珠つなぎをしていく所存です!!