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「それでも生きなくちゃ」(10)
免許を取ってから、初めての運転。
おかーさんを後ろに乗せてアタシはもう一度バックミラーを確認した。
「ぢゃあ行くよ?」
アタシは助手席に置いたiPhoneから音楽を流した。
鼻歌交じりに病院までの道を1時間かけて運転する。
(レンタカーだけど、これ乗りやすいな)
ナビを見ながら、だいたい把握していた道を走らせる。
後ろからちょこちょこおかーさんが口出しするのが難点だけれど……
大きな病院はやはり人が多い。人混みが苦手なアタシはヘッドフォンで音を遮断する。
受付を済ませて、病院の中にドトールを発見したアタシはコーヒーとたまごサンドを買った。
「暇だから外にいるよ?」
喫煙所を探して煙草に火をつける。
「まだまだ、暑いなぁ……」
コーヒーを1口飲んでアタシはヘッドフォンのボリュームをあげた。
人混みが苦手。
並ぶのも嫌い。
女の子の集団も苦手。
「アタシ嫌いなものばっかりだな」
2本目の煙草に火をつけながらぼんやりと空を見ていた。
(今頃、みんな仕事してんのかな?)
君の顔が浮かんだ。
(仕事してるとこ見たことないけど……)
「謎いなぁ」
自分の気持ちも曖昧で、君がアタシに対してスナックのホステスみたいな扱いをしているのは何となくわかる、わかるけど……
「アタシ、結構めんどくさいオンナなんだけどな……」
まだ、なんにも始まってない、きっとこの先も……
頭ではわかっているけど、アタシは君と話している時間が自分の中でとても大切な時間になっていることに気づいていたんだ。
君はどんなつもりで、アタシとセックスしたの?
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