當年とつて25、私と私の持つ氣狂ひの附き合ひは早1年を過ぎた。 今まで何故自分が此境遇に身を置か不るを得ないか、亦いつ此生地獄の長き長きトンネルの出口を一體發見能きりやうかを、まるで大海に突然迷ひ混んだ小さき蛙の氣分で日々を過ごしてゐた。浪は荒く、水は此の潰れ蛙の芯に冷たく、誰も、何も、哀れで孤獨な難破の助けにはならなかつた。 藥は飲めば身體の發作は治まるが、精神の發作は治まらぬ。「先生、最近ぢやあ座椅子が人に見えるんです。況やオウディオスピイカアの私を見下ろす恐ろしさよ