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シンカンセンスゴクカタイアイス

先日、久しぶりに東京出張があり、東海道新幹線を利用しました。どのくらい久しぶりなのかと言うと、

  • 「消費税10%」と明記されていないと領収書が経費精算に使えない(インボイス制度のせい)

  • 車内のチャイム「会いにいこう」を初めて聞いた(TOKIOではなくなった)

というぐらいです。プライベートで日本中を旅行していますけど、東海道新幹線って出張の時以外は滅多に使わないですね。
30年前は東海道・山陽新幹線の車内販売のアルバイトをしており、その際には新幹線の車窓風景はどのあたりを走っているかの指標として頭に叩き込み、その場所で然るべき物品の販売に行ったものでした。
さて、そんな車内販売で取り扱いに注意した物品といえば「アイスクリーム」でした。巷間では「シンカンセンスゴクカタイアイス」とか「シンカンセンスゴイカタイアイス」と呼ばれているらしいですが、確かに購入時のアイスクリームは硬いです。硬いのには理由があります。

  1. 低温保存手段がドライアイスと保温容器のみなので温度管理が難しい

  2. 車内販売では付加価値のあるものを売る

アイスクリームが硬い理由に1番を挙げているニュース記事やコラムやブログは散見されますが、販売していた側として2番について説明します。
昨今の人手不足とやらで(私は昨今の人手不足は「低賃金で働いてくれる人手が不足しているだけ」だと思っています)新幹線の車内販売が無くなろうとしております。私が働いていたころはそんなことはなく、戦後ベビーブームによる人口ボーナスをのうのうと食いつぶしている御時世でした。それでも車内販売会社の経営は厳しく、人件費がバカにならない商売であったことは変わりません。よって、少しでも客単価を上げ、利益を確保するために、付加価値のある物品(要するに高級品)を売る方針を取っていました。普通に高級品を売っていたのでは売れ行きが厳しいかもしれませんが、新幹線の車内という特別感のある場所では多少財布の紐も緩みます。なので、この販売戦略は妥当であったと思っています。
さて、アイスクリームの高級品というのは、乳脂肪分が高いものと相場が決まっています。乳脂肪分が高いアイスクリームは、低いものと比べて冷凍するとカチカチになります。なお、アイスクリームと呼ばれるものについては、日本の法律では以下の4種類に分類されています。

  • 種類別 アイスクリーム(乳固形分15.0%以上 うち乳脂肪分8.0%以上)

  • 種類別 アイスミルク(乳固形分10.0%以上 うち乳脂肪分3.0%以上)

  • 種類別 ラクトアイス(乳固形分3.0%以上)

  • 種類別 氷菓(上記以外のもの)

シンカンセンスゴクカタイアイスは一番上の正真正銘の「アイスクリーム」です。凍らせたらカチカチになります。普段お手軽なラクトアイスを食べている感覚でシンカンセンスゴクカタイアイスに立ち向かうと、「スゴクカタイ」と思うのは致し方ありません。
ということで、「シンカンセンスゴクカタイアイス」が硬い理由をまとめると、「数ある『アイスクリーム』の中でも凍らせればとても固くなるアイスクリームを、溶かさないために必要以上にしっかりと低い温度で保存しているから」となります。

そんなシンカンセンスゴクカタイアイスも今月で普通車の車内販売からは姿を消す、もとい普通車の車内販売が姿を消すのです。JR東海は、のぞみの停車駅ホームにアイスクリームの自動販売機を設置することを表明しています。しかしながら、駅のホームで買うアイスクリームにそこまで高級品を並べる必要はあるのだろうか、そして自動販売機であれば温度管理は確実にできるはずだから目一杯低い温度で保存しないのではなかろうか、などと考えますと、シンカンセンスゴクカタイアイスはまもなく伝説の食べ物となってしまうのかもしれません。

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