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しだゆいのノート

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2021年2月の記事一覧

記号・孤独・ヒーリング――阿部共実『潮が舞い子が舞い』を読むための三つの視座

 阿部共実『潮が舞い子が舞い』(既刊五巻、秋田書店、2019―)は、とある「海辺の田舎町」で「高校2年生の男女が織りなす青春群像コメディ」である(単行本カバーより)。ここに堂々銘打たれている通り本作はきわめて上質な、この著者にしては驚くほど素直に楽しく愛おしい「コメディ」に仕上がっており、とりわけ初期に顕著であった「心がざわつく」系の仕掛けはほぼ見られない。また登場人物の数もまさに「群像」と呼ぶに

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