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ワイン

●◯●Twitterで紡ぐ物語●◯● 
この作品は恋愛物語を朗読したくなったわたしが、Twitterで「物語をコメントに書き始めるので誰かコメントで続いてほしいです」とお願いしてできた作品です。
恋愛物語を朗読したいとは言ったけど全く違う方向に進んでもOK、そして何度コメントしていただいてもOKとお伝えしていました。
どう展開していくのか、終わることができるのか、ドキドキワクワクしながら楽しみました。
コメントしていただいた文章をそのまま載せます。
ご協力してくださった皆さまありがとうございました!名前入りの作品を記録に残します!




【シダ】

「ただいまー。」

実家から出て一人暮らしを始めて半年。
誰もいない空間に挨拶をすることにももう慣れた。

コンビニの袋からワインとチーズを取り出し、インスタをチェックする。


【アラオー】

ストーリーは、足跡が付くから基本見ない。でも、彼のストーリーだけはいつも確認してしまう。

いつ、誰と、どこで、何をしていたのか気になる。

今日の帰りは23時らしい。ねぇこんな時間まで誰と何をしていたの?


【うなじ】

もう一度小さな声で「ただいま」って呟いてみる。それから少しだけ泣いてしまって、ワインをなみなみと注いでみた。


【ぐぅ】

表面張力。か。
彼への想いは、どこまで膨らむんだろう。
「あっ」
溢れ出たワインは私が拭いて
あげられるけど
溢れ出した想いは
誰がどうしてくれるんだろう?
分かってる。
彼以外には、どうにもできないって事。


【シダ】

「はぁ。」

まさか自分がこんなに人を好きになれるなんて思っていなかった。

23:30

彼はもう帰っただろうか。
何度もスマホを手に取りメッセージを書いては消す。


【ずっちー】

気を紛らわすために画面をスクロールして、他の人のあふれる投稿を流し読み。

「あ、このお店美味しそう、彼と一緒に行ってみたいな」
「このモデルさん顔とか服のセンスとか彼のタイプそう〜」
「このネタ動画めっちゃ面白い、彼なら絶対笑ってくれる」

なのに、なぁ。


【酢めし太郎】
あっ。

スマホの電源を誤って押してしまった。

真っ黒になった画面にはニターっとした自分の顔が映っていた。

「何が楽しいんだか。」

そう呟いた後、スマホに映ったその顔がみるみる悲しみの表情に変わってゆく。

ついには、その顔は歪んでボヤけていった。

このまま寝てしまおうか。


【小枝】

あ…降りだしたんだ…
なんだか雨音が心地いい

あしたの予定を変更して
たまには実家に帰ろうかな

『♪』

こんな時間に誰だろう


【うなじ】

着信は親友のA美だった。
少しがっかりしながら電話に出る。
「ねぇ!あいつのストーリー見た?!最新のやつ!」
突然の大声にびっくりして、少しワインをこぼしてしまった。
慌ててインスタの画面に切り替える。


【アラオー】

「今日は知り合いの社長さん達とワインパーティー🍷in六本木」

自称港区女子、の投稿に、彼がいつも付けているタグホイヤーの時計が、匂わせのように写っているという。

大袈裟だよ、A美。拡大してごらん、彼の時計はそれよりワンランク上のモデルだから彼じゃないよ。

ねぇ電話の内容はこれだけ?


【シダ】

A美「あーのさ、チケットが取れてさ、明日。
2ヶ所キャンセル待ちしてたんだけどそれが当たっちゃって、どっちか選んで一緒に行きたいなーって思って。」

A美「期間限定の絵画展か、大喜利LIVEかどっちがいい?」


【うなじ】

ここで彼に似合う女性なら、迷いなく絵画展を選ぶだろう。
でもなんだか最近、
彼に追いつきたくて、
彼にふさわしい女になりたくて、
背伸びし過ぎて、疲れてしまった。

「もちろん芸人さんLiveでしょー!」

A美、ありがとう。


【シダ】

-翌日-

あっはははは!はーっ!

「いやぁ、おもしろいねぇ!」

A美「うんうん!」

司会者『はい、次いくよ。』

回答者たちが手持ちのホワイトボードから文字を消して次のお題に備える。

『お題【(次の人お題から書いて☺️)】』


【小枝】

司会者『お題【10文字作文】
テーマは「なんだそれ!」で。』

なんだそれ、か。

「お前のそういうとこ好き。」

あの彼の言葉はなんだったのかな…


【ずっちー】

「一緒に居るとラクだわ」

その言葉をもらいたくて、
必死に頑張って、
合わせちゃってたなぁ。


【ずっちー】

「また今度、必ず行こう」

次いつ会えるかなんて、わからないのに。
それまでお互い何も変わらない保証なんて、どこにもないのに。


【ずっちー】

「お前なら一人で大丈夫」

そんなの、心配させたくなかっただけ。都合の悪い存在になりたくなかっただけ。
“大丈夫”にさせたのは、そっちのくせに。


【うなじ】

その瞬間場内が揺れるようにどっと沸いて、私はハッと我に返った。

「今回の大喜利大会!
優勝は、シューシューロケットー!」

会場が再び声援と大きな拍手に包まれる。みんなの笑顔が弾けている。私は思わず顔を手で覆った。


【うなじ】

「はー面白かったねー!めちゃくちゃ笑っちゃった!
…あれ、泣いてるの?…あー!そんなにおかしかった?!あはは!だよねー!」

良かった、
A美が私の涙を、笑い涙だと勘違いしてくれて。


【シダ】

溢れ出した想いは
誰がどうしてくれるんだろう?
分かってる。
彼以外には、どうにもできないって事。

-おわり-