声
朝起きて洗濯物を干しゴミを捨て家に戻って、
洗い物は…あとでいいか。
必要最低限のことは終わった。
少し暑さを感じるがエアコンはつけない。
私にはもったいない気がして。
冷たい水が入ったコップをテーブルにそっと置き、大きめのソファーに沈み込んだ。
無意識に動く指でSNSを流し見る。
あぁ、もう動けない。
やる気がでない。
からだが重い。
やるべきことはすぐに手をつけて時間にゆとりを持って終わらせる方だ。
なのに最近の私はといえば、ギリギリまで何もできないし…ちょっとした忘れ物も増えた。
なんというか…
楽しいことはあるのに心から楽しめない日々。
こうなった原因は…。
汗をかいたコップを視界に入れる。
時間が流れていく。
13:16
のそりと起き上がり背筋を伸ばしてみる。
冷蔵庫の中から食べられそうな物を適当に取り出し、適当に温める。
半分くらい食べたところでひどく喉が圧迫された。
箸が進まない。箸を持ち上げられなくなった。
浮いた空間をただ見つめる。
いつからだろう。
本当の心を隠すようになってしまったのは。
いや、本当の心を出せなくなってしまって。
ん?そもそも本当の心って出してもいいんだっけ?
なんかもういっぱいで、疲れた。
疲れてもいいんだっけ?
なにもできない
なにも できない。
意図的に、声に出してみた。
「なにもできない。できない!」
音が、声が、耳に、届いた。
私に、届いた。
そう、なんにもできない。
初めての感覚だった。
声に出したら涙が出てきた。勝手に。
こんなに抑えられていた感情だったのかと今、知る。
「涙が出てよかったね」もうひとりの私が言う。
そのまま気が済むまで泣いた。
声をあげて泣いた。
テーブルにはティッシュの山。
たくさん泣いたなと少し誇らしくなるから不思議だ。
〝なにもできない”が体に馴染んだら、なにもできないという言葉を手に入れた気がした。