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深夜3時、礼儀正しい露出癖の男にインタビューした話

 幼い頃夜になると「しち宮ちゃん、寝るの下手くそやねんな。」と母に自己申告していたほど入眠が下手くそで、28歳になった今も相変わらずだ。

 幼い頃の寝れない夜は当時好きだったアニメの主人公である犬夜叉を甘やかし手懐けたり、名探偵コナンの怪盗キッドの相棒になる妄想をしていた。彼らのそばに居るのはハードなので、妄想に力を使い果たして眠るのが幼少期の日課だった。
 大人になった今はと言うと、NetflixやAmazonプライム、イラスト制作やたまに手芸。あと読書が選択肢に並ぶ。

しかし極たまに、具体的には2年に1回ほどの頻度で無性に人と関わりたくなる発作が起きる。その際満たしたい条件は、なるべく気楽で、話し相手は知らない人がいい。
こんな時間に話すのだ、くだらない話を後腐れなくしたい。

4月某日深夜3時、その発作が起きた。
仕方ないのでチャットアプリをダウンロードし、雑談がしたい旨をアプリ内タイムラインに投稿する。
この時使ったアプリは、ユーザーがタイムラインへ投稿した一言からプロフィールに飛びチャットを送り、応じられれば会話が続く。チャット画面では文章と画像を送ることができ双方同意すれば音声通話もビデオ通話もできる仕様だ。

チャットや通話目的のアプリでは男女の需要と供給バランスは不均衡が常なので、私が雑談したいと投稿するとすぐ数名からメッセージが来た。

さて本題に入る前に前提知識を共有しておきたい。
知識と言ってもかなりくだらない言葉についてだが。
「チン凸」をご存知だろうか?
インターネットの下層には自身の極部をカメラに映し画像や映像で無闇矢鱈に人に見せて喜ぶ男がいる。彼らの多くはチャット冒頭に写真添付をしたり通話でカメラをつけ突然見せてくるので「極部=チン」「突撃、突然=凸」の意味を含ませ、その行為をチン凸と呼ぶ。
多くの場合チン凸する者は気が急いており会話をする気がなくコミュニケーションが成り立たないのも特徴だ。
もしこの言葉を知らない人がこの記事を読んでいたとしたら、こんなにどうしようもない言葉を教えてしまって申し訳ない。
だがなぜこの言葉の意味を説明したかと言うと、深夜にチャットアプリで知らない人と会話しようとするとチン凸をされる確率が非常に高く警戒する必要がある上、本題にも絡むからだ。
警戒と言っても他人の極部を見たところでショックを受けるようなピュアな感性は無いのだが、一方的に欲求をぶつけられるのは不快である。


さてチャットの話に戻そう。結果から言うと、この日私が会話をした男はチン凸野郎ではなく律儀な露出魔だった。
チャットの時点で「見てほしい」と画像が送られチン凸を警戒しながら画像を開くと立派な筋肉が隆起した上半身の自撮りだった。
警戒していただけに気が緩み、素直に筋肉量に感心し褒めた。
すると男は喜び「通話に切り替えたい」と送ってきた。写真はチン凸ではなかったものの、ビデオ通話でチン凸の可能性は残る。ほんの少し警戒しつつ楽しい会話が続く期待もあり通話を了承した。

ここから当時の会話は人物名とカギ括弧で再現し、括弧で私の内心を記すことにする。

筆者=私、男=💪

~挨拶・軽い自己紹介略~

私「さっきの自撮り、本当に筋肉で安心しました。いきなり極部の自撮り送り付けてくる人とかいるんですよ~」
(念の為、ビデオ通話で見せるつもりだとしたらイヤだぞって暗に示しておこう。ジャブだ!)

💪「アッそ、そうなんですねっ……やっぱ、ダメですよね、そんなこと、しちゃ。失礼だし、一発で会話とか人間関係終わっちゃうようなことしちゃ……。」

私「そうですよね~」
(ずっと声と一緒に衣擦れの音がしてるな)

💪「あの、普段出会いとかなくて……だからそんなことしちゃってて……モテなくて、性癖歪んで……すみません、やっぱ、見るのって嫌ですか?」

私「え?うーん進んで見たいものでは無いね」

💪「そ、そっか……そっか……」

私「もしかして見せたい人?」
(チン凸なのに会話ができるぞ……?)

💪「はい……でもあの、失礼なんで!悪いことなんで!普通に会話します。ッスゥーーああでもいまバキバキで……すみません、静まれ、静まれ。」

私「へえ!じゃあせっかくやからインタビューに付き合ってくれへん?ずっと気になってたことがあるの」
(チン凸ではないが、チンチンに喋りかけてはる。チンチンと喋るタイプの人間か?)

💪「は、はい」

私「なんで見られたいの?」

💪「1番はストレス発散っすね、仕事のストレスを発散するために休日の前の夜こうやって見てくれる人を探してます。それしないと寝れなくて。」

私「そうなんや、疑問なのがさあ、筋肉なら鍛えて大きくなるから見て欲しい気持ち想像できるんやけど極部は鍛えられないしきっと努力で変わらない。なのになぜ人に見せたいの?」
(不意打ちでしてやった感が楽しいのかなぁ?)

💪「あの、ひとつ。見てほしいのは女の人だけです。男には声掛けないです。……たしかに、鍛えられない。……生まれたまんま……。でも見せたいのは、たくさんお願いしてやっと見てくれる人に出会えたってのが嬉しいんです。」

私「そっか数打って苦労が報われるのがいいんや~!律儀に聞いてから見せようとするのが珍しいなと思ってたねん。いきなり見せる人もいるからさ。」
(達成感から性的な快楽得ることってあるんや!?それにしても卑屈な性癖。)

💪「いいって言ってくれる人じゃないとなんか……あとアカバンも怖いので地道に声掛けてます。」

私「なるほどね。と言うか、頼めば見てくれる人もいるんや?」

💪「いますいます!いろんな人がいるので。見ていいって言ってくれても気まずそうに通話が切れることもあるし、逆に僕より向こうがヒートアップすることもあります。」

私「へえーいろいろ!じゃあ1番好きな反応は?」

💪「1番はやっぱ、指示をくれる人ですね。カメラを付ける時って服着てるんですけど、脱ぐとこから指示を出してくれる人がいます。」

私「そっからプレイが始まるのかぁ。」

💪「そうっすそうっす。嬉しいっすね!」

私「ちなみに最初に地道に声掛けて、見て貰えるまで粘るって言ってたやん。正直なとここんなインタビュー受けてるどころではない?」

💪「あっ……や、今も何人か他の女の人にチャット飛ばしてます。すみません。」

私「そやったんや、活動がんばってるぅ~」

💪「あの、すみません!やっぱムラムラして、エロい動画見てきていいっすか、ほんますみません失礼で……会話中やのに……。」

私「面白かったしいいよ~」

💪「すみません、ありがとうございます!」

~さよならを言って終話~

 

意外な動機と妙な低姿勢におかしみを感じでとても充実した時間だった。
回答がある度感心し、謝られる度笑った。
端折ったが、実際はもっと謝られた。

人の性癖の種類は数多あり、露出癖と言うと大人になればそういう人もいると多くの人が認識しているメジャーな性癖だと思う。
被害に遭う側としては、露出魔と言うとトンチンカンな行動なのに威圧感があり、自身の満足のためなら人の気持ちなぞ意に介さないのだと思っていた。
しかしその1人の話をしっかり聞いてみれば意外性に溢れていた。卑屈で罪悪感を持つ反面、それを許された時の喜びはひとしおなのだろう。意外性って面白い。



ちなみになぜ今回咄嗟にインタビューに移れたのか、会話を再現できたのかについて一応説明しておく。
人の性癖の多様さや探究心には以前から興味があり、性癖インタビューはずっと前から気の合う友人と一緒にやりたいねと言い合っていた。Skypeで話者を募り夜な夜な話を聞こうとしていたのだが、計画は流れてしまっていた。

会話内容を再現できたのは、件の通話終了直後に前述の友人にLINEのメッセージで会話を文字起こしした文を送っていたからだ。
この友人なら深夜であろうと喜んで食いつくだろうと踏んみ、予想通りテンポのいい合の手と「いいレポートだった」と感想を貰った。

以前から興味があったことと、💪が会話が成立するタイプだったことが幸いして私の初の性癖インタビューは晴れて成功した。たいへん喜ばしい。楽しかった。またやりたい。なんならシリーズ化したいし、もっと長く話を聞きたい。



もしこれを読んでいる人の中に少し変わった性癖をお持ちの方はぜひお声かけ頂きたい。もちろん犯罪行為が絡む性癖はNGだが、それ以外の人は男女問わずぜひインタビューさせてください。


変わった趣味を持ってしまったが楽しいから仕方がない。
もしまた興味深いインタビューができたら投稿するとしよう。

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