写真が撮れなくなってしまった話
写真が撮れなくなった。
正確には撮れるんだけど、撮りたいと思わなくなってしまった。
フィルム代と現像代をかけてまで写真を撮ることに意味はあるのかな。誰かに評価されるわけでもないのに。と思うようになっていたのだけど、久々にまとめて現像に出したら、ああこんなところに行ったなぁとかこんな写真撮ったなぁとか思い出して、フィルムで撮っておいて良かったなぁと思った。
今は日常でもいつか振り返った時に必ず特別なものになるので、その時のために記録しておこうと思ったんだった。フィルムを始めてまだたった半年なので、まだ撮ったことのない季節がたくさんある。少しずつ残していこうと思う。
78週間前
忙しくしていると、感性が死んでることに気づく。いつだってインスピレーションが湧くのは、のんびり自然に触れたり、お風呂に浸かったり、一人でぼーっとしてる時だ。そういえば一年前のなにもしていなかった時間は、新しい土地で見つけた色々なことに感動してたくさんのインスピレーションを得ていたなぁ。
二十代も、今の感性も。もう戻らないよ。戻らなくなる前に、形にして残さなきゃって思う。
今現在の自分を凝縮して、形にするのだ。たとえお金にならなくても。それはきっと未来の私にとって、とても価値のあるものになる。
子どもの頃からずっと。なにかつくっていないと、心が死んでしまうんだろうなと思う。
32週間前
(上記は私のインスタ写真アカウントです)
こんなに、こんなに声を大にして、未来のために今を残したいって。
そんな風に言っていたのにも関わらず、今を残したいって思えなくなってしまった途端、写真も撮れなくなってしまったんだ。
理由は、これまでの人生で最も辛い離別に直面しているから。
今写真を撮って残したら、いつか今の写真を見た時に辛く悲しい思い出が蘇ってしまうんじゃないのか?
そう思うと、怖くて何も撮る気になれない。
同じ理由で、新しい音楽も聴きたくなかった。
音楽って自分にとっては一番当時の気持ちとか空気とかを思い出させる。だから辛い時の曲には、なんだか辛い空気が付き纏ってしまう。
なんの罪もない音楽に、悲しい空気を纏わせたくなかった。
でも年末に大好きなスピッツのワンマンツアー−それも新アルバムのツアー−のチケットを取ってしまっていた。離別を経験する前に無邪気に予約してお金も払ってしまっていた。せっかくのライブはやっぱり楽しみたいから、聴かないわけにはいかない…そう思って、仕方なく新しいアルバムを聴くことにした。
結果、聴いてみて本当に良かった。
これはスピッツだからかもしれないけど、暗い曲が少ない(特にこのアルバムはそう感じた)。明るいんだけどすごく優しくて、今の自分の心に寄り添ってくれる曲ばかりだった。
ライブ当日、アリーナ15列目。とっても近い距離で聴いたスピッツは最高だった。楽しかった、暗い夜を這いずり回るような日々の中でもキラキラ光ってとにかくただただ楽しかった。そんでもって、スピッツの音楽と演奏、メンバーのあたたかさは、弱っている自分に寄り添ってくれた。勇気をくれた。なんとか前に進んで行こうって思えた。
話を写真に戻そう。
年が明けて、無性に写真を撮りたいような気がした。近所の見慣れた海だけど、ちょっと歩いて写真を撮りに行ってきた。
綺麗とは言えない小さな海だけど、この街での暮らしを思い出した時にきっと一番にこの海を思い出すだろう。
知り合いもいない慣れない土地で気分転換になったのも、いろいろな作品のインスピレーションをもらったのも、買い物に行くときにわざわざ遠回りして歩いたのも、苦しくてどうしようもない真夜中に逃げ出してきたのも。全部この海辺だった。
今はちょっと、涙で歪んでしまって見えないけれど。
この写真を見たときに、今の辛い気持ちを思い出すのかな。
でもできることなら、辛い中でも見つけた前向きな気持ちとか、私に手を差し伸べ支えてくれた人たちのこととか、スピッツに救ってもらったこととか…
そう言ったきらきらしたものも、一緒に思い出せたらいいなって思う。
未来の自分、一つよろしく頼むよ。
ちなみに個人的な日記のようなものはほぼ毎日つけている。
写真も音楽も瞬間的に当時の感情や空気を思い起こさせることはできるけど、自分がどんなことを感じていたかを詳細に記録できるのはやっぱり文章だけだ。そして時を経て、私こんなことを思っていたんだなぁと驚いたり発見があったりする。過去に書いた文章は全部愛おしいし、そこから漫画やイラスト作品のヒントにつながったことも何度もある。
だから、苦しい時こそ文章に残せ。
(もっとこんな風に公開してみてもいいのかもしれない)
「日常はいつか非日常になる」。
皮肉にも過去の自分の言葉通りになっているけど、きっとそれは真理だ。
どんな形でも、やっぱり私は今感じたものを残していこう。
ぼちぼち写真もまた撮りたいなぁ。
うん、撮ろう。撮りたいと思えたら、またいっぱい撮ろう。
読んでいただきありがとうございます!何か心に引っかかるものがあれば嬉しいです。