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「復職に向けた予行演習といいながら、実は熱くなれるものを求めていたのかも」〜ママボノ体験を振り返って〜

ゲスト/ 栗林真由美さん・荒川あゆみさん(プロボノワーカー) 

聞き手/北場彰さん( サービスグラント エグゼクティブパートナー)

総合司会/嵯峨生馬

嵯峨:今日はまたものすごい雨で、朝方よりもさらに雨脚が強くなっているように思います。そとはちょっと天気が今ひとつですけれど、この時間の「渋谷のプロボノ部」は、プロの仕事のスキルを生かしたボランティア活動をテーマに、元気にお話を進めていきたいと思っております。

今日この時間にお越しいただいたのは、栗林真由美さんと荒川あゆみさん。そして聴き手としていらした北場彰さん。この3人と私・総合司会の嵯峨生馬で進めていきたいと思います。まずは皆さんに簡単に自己紹介いただいて、その後北場さんから質問を投げかけていただく形で始めていければと思います。

栗林:栗林真由美と申します。今現在、私は勤続10年目なんですけど、2014年の1月から産休に入り、2月に娘を産みました。「ママボノ」に携わったのがちょうど娘を産んで8〜9カ月後。まだ、娘がバタバタしているときに参加させてもらって、後ほど多分説明すると思うんですけど「NAGOMI VISIT」さんというNPOに対してプロジェクトマネジャーを務めさせてもらいました。

嵯峨:ありがとうございます。そうですね。最初に今日のテーマを申し上げるのを失念してしまいました。

「ママボノ」というのが今日のテーマなんです。プロボノというのは、一般的に企業で働いている人たちや、そういうスキル経験を持ってらっしゃる方がその仕事のスキルを生かしてボランティア活動をするということなんですが、「ママボノ」はある意味、プロボノの応用版で、ママたちによるプロボノということになります。

おふたりは、もうすでに職場復帰、仕事復帰をしていらっしゃるんですけども、育休産休をとっていらっしゃる間に、プロボノに参加していただく。そうすることによって復職に向けたウォーミングアップになったり、あるいはさまざまなネットワークが広がったりという経験を得ていただける。そんなプログラムが、この「ママボノ」というものなんです。今日は「ママボノ」とは何かについてじっくりお話をお伺いできればと思います。

荒川:荒川あゆみです。私は新入社員で2009年に広告会社に入社しまして、娘を出産したのは2014年の夏です。「ママボノ」に参加したのは10月からで、娘が2〜3カ月の頃から参加させていただきました。
「ママボノ」を終えて、2015年4月から復職ではなく、転職をして今は広告会社ではないところで仕事をしています。ママボノのプロジェクトでは、栗林さんと同じく「NAGOMI VISIT」というNPOを支援する活動を一緒にさせていただきました。

―― ありがとうございます。本当にすごくアットホームなかたちでいろいろお話を聞いていきたいなと思ってます。

やっぱり視聴者の方はこの「ママボノ」というようなものをよく見つけたなっと思ってらっしゃると思うんです。まずは、どういうタイミングで見つけて、なぜこれをやろうと思ったかについて聞かせてもらえますか。

栗林:私は、子どもを産む前にプロボノでサービスグラントさんにお世話になっていて、社外の活動で自分がプロジェクトマネジメントを務めることができたという経験がすごくよかったというのがありました。育休中はスキルダウンしてしまう時期だとよく聞いていたんですが、そこを何とか変えていきたいなっていう思いがあって、何かないかなって探していたときに「ママボノ」を見つけて、すぐにサービスグラントさんの事務局に応募のメールを送りました。

―― やはりそれはプロボノの経験があったからこそだと思うんですが、従来のプロボノのプロジェクトに参加するという発想はなかったのでしょうか。

栗林:そのときはまだ子どもが小さくて、前に参加したプロボノでは夜の活動が多かったのでちょっと難しいなと思いました。それと、ママたちでプロジェクトをやるところに結構興味があって、制約がある人材だらけのプロジェクトメンバーで果たしてちゃんとした成果物を納められるのかというところにもチャレンジしてみたくて応募したというのもあります。

―― ありがとうございます。リスナーのなかには子育てでたいへんなときになんでまた…というお考えをお持ちの男性もやはり多いかと思うんですが、旦那様のご理解とははどうだったのでしょう。

栗林:旦那様のご理解は割とありました。というのも我が家は自分がやりたいことをやるというのがお互いのルールになっておりまして。

―― なるほどー。そのあたりはもう反対はなく…。

栗林:そうですね。

―― それは素晴らしい。

栗林:そのかわり旦那は社会人バンドマンで好きなバンドをやっているので、私も好きなことをやっているという(笑)

―― 環境は特殊かもしれないですね(笑)。
荒川さんはどうですか? ママボノを見つけた経緯とか教えてもらっていいですか。

荒川:私は実はサービスグラントさんとかプロボノとかずっと前から存じ上げていました。2009年にプロボノ元年という宣言のイベントにも社会人1年目で行ってたんです。そこでステージの上でプロボノをされてる社会人の先輩たちの話を伺って、私もいつかこういうふうに話せるようにプロジェクトに関わってみたいなって思っていて。ただ、広告会社では営業という職種もあって、プロボノっていうほどのスキルがいつか自分につくんだろうかみたいな不安をずっと持っていました。プロボノっていうほどスキルないし、自分は「ボランティア」かなあと。

なので、何となくプロボノの動きを見ながら、やってみたいけれど、自分が関われるものではないなって見ていたんです。そんななかで「ママボノ」の募集を見たときに、「ママ」って付いているし、今私ママになったからこれだったらいけるかも、って思ったんですね。普通のプロボノだったらちょっと遠慮しちゃうんですけど、これだったら自分も入っていける。ママという共通項を持つ皆さんと取り組めるのならいいなと思い、応募させていただきました。

―― なるほど。以前に実際に活躍されているプロボノの方を見られたとのことですが、どんな人物像ですか? こういうスキルがあるとか、なにかイメージがあると思うんですけど。

荒川:印象的だったのは、Web周りを制作されたエンジニアとか、デザイナーの方。ほかには社会人10年目のプロジェクトマネージャーの方々が登壇されてて、そのときは、あまりにも自分の社会人生活での仕事のスキルとかけ離れているような感じがしてました。

―― おふたりのような方が活躍されている姿を見て、いつか自分もっていう方が多くなればいいですね。

荒川:自分にはそんなスキルがあるんだろうか、時間的制約もあるしママなのにって思われる方もいらっしゃると思うんですけど、だからこそ「ママボノだからやってみよう」というきっかけになればいいなと思います。

―― ちょっと核心に迫るかもしれないですけど、このママボノを広げるやり方とか工夫についておふたりのお考えをお聞かせください。こういう環境があるといいとか、こういうことがあったらいいんだろうなみたいなイメージありますか。

栗林:一緒にやってたメンバーの中には、こういう取り組みをやってるから育休中にやってごらんと会社からすすめられたという方もいて、そういった会社の後押しも結構いいかなと思っていました。

―― それは別に「ママボノ」だけでなく、CSRとか、ボランティア活動を推進されているように、ということですか?

栗林:そうですね。

―― 荒川さんはどうですか?

荒川:私は産後、ママでしか触れない情報の多さにびっくりしたんです。産後に知らなきゃいけないことはあまりに多くて、妊娠中もちろんそうですけど。でも、ママで、プラスお仕事されてる方が接する情報源はそんなに多くない気もして。なので、そういった情報源の中で、ママボノがもうちょっと浸透するとよいのかなと思いました。

よい例のひとつはNPO法人マドレボニータさんだと思います。私の周りでは、産休育休入られた方が、マドレボニータさんにいくのが定番になっていて。みんなここで仲間を得るよね、みたいなモデルコースができつつありますその延長で、復帰まで時間あるしママボノやろう、みたいな流れが定着していくと、かなり興味持たれる方や、実際取り組む方が増えるんじゃないかなと勝手に想像しています

―― 素晴らしいですね。ほんとうにお話聞いていると、聞きたいことばかりでてきます。
さきほど、復職される前にスキルアップしておきたい、自分の存在価値や、社会とのつながりを強くして、よりレベルアップして戻ってきたいというお話がありましたが、女性はすべてそうなんですかね。

栗林:なんでしょうね。女性って、産休前と産休後で比べると、働きたいというモチベーションは産休後のほうが実はあったりするんですよ

荒川:そうですね。

栗林:でも、やっぱりどうしても時間的制約が出てきてしまう。
なので、しかたなくワンランク仕事を下げたりとか、自分のモチベーションを封印してしまったりして、淡々と仕事するような実態が実際あったりするんですね
。本当は、時間的制約がなかったら思いっきり働きたいという方で結構多いと思っていて。

―― 荒川さん、どうですか? そのあたりのコメントは。

荒川:いろんなモチベーションの方がいらっしゃるので一概に言えないとは思います。やはり私のお友達でも、今はそんなに仕事頑張らなくても子育て優先かなあ、みたいにおっしゃる方もちろんいらっしゃいます。

でも、外部環境が厳しいから、保育園に入れづらいとか、子どもを産んだのだから少しゆっくりしたらと周囲から言われるとか、いろんなことを受けて、今は仕事の時期じゃないって思ってしまっている方もいる。モチベーションを削られる要素があまりにも多すぎて、仕事への向き合い方にかんして本当はどう思っているのかがすごく見えづらくなっていますね。

もしかしたら、仕事に対するモチベーションはかなり幅広くて、もっとバリバリやりたいと思うママもいれば、本当は仕事を休んで子育てしたいママもいる。もっとバリエーションがあるかもしれない。けれど、いろんな社会的制約があって、なんとなく今は仕事はほどほどでいいんじゃない、というところにボリュームゾーンができてしまっていると思います。

だからもう少し、例えばママボノみたいなネットワークを通じて仕事への向き合い方についても客観的に考える機会があったら、実はママが働くモチベーションももっと変わるんじゃないか。あるいは、本来のモチベーションのまますすんでいく人が増えたりするんじゃないかなと思ったりします。

―― なるほどですね。
かなりもう大きなターニングポイントですね。このタイミングというのは。少し時間の余裕を持てるというか、ここでどうしようかっていうのを考えられるようなタイミングなのかもしれませんね。

特に荒川さんは、いったん休養されて元の会社に戻るのではなく転職されたという話を聞きましたけども、そのあたりのお気持ちを聞かせてもらえますか?

荒川:私は会社にとってはあまり良くない形かとは思いますが、産休をとってそのまま退職という形になりました。今は、午前中は鍼灸の専門学校にいって、午後は前職に近いPR とかイベントとか新しい事業をいろいろやっている小さな会社でパートタイムで働いています。前職でもっとスキルを磨いてキャリアアップっていうコースもなくはなかったんですが、私の場合はこの仕事を本当に子どもを預けてまで続けたいかなとか、この職場でこのまま仕事していて子どもにどういう顔でただいまとかおかえりって言えるような母親になれるかなってちょっと考えたときに、もしかしたらそんなに稼げないかもしれないけれど自分が本当にやりたいことをやりたいと。そう思って転職と学校に行くことを決めました。

―― すごく強い志ですね。その専門学校へ行かれたのは、もともと考えていたことですか?それともこのタイミングだったのですか?

荒川:専門学校は、割と半日午前に行くか夜間に行くかという形が多いんですが、子どもがいるので物理的に夜間に行けない。じゃあこのまま会社に行き続けて20年後にこの学校に行きますかと言われるとちょっと考えてしまって。やるんだったら今だ。やはり私は今これをやりたいと思って。会社を続けるか、辞めて学校にいくかの二択で、その間はなかった。ある程度は決めてましたが、育休中にそういうことをゆっくり考える時間があったというのは事実です。

―― ご家族のサポートやご理解はかなり高いような感じですよね。

荒川:そうですね。
でも実は、うちは籍を入れてない事実婚なので、お互いが自立して経済基盤を作り生活していくってのが大前提なんです。それぞれが自分の生業を持って生きていこうという形なので、逆に「お互いちゃんと働こう」「いつでも何処でも食っていけるようになったほうがいいよね」みたいな。

―― そのおふたりをみて育った将来のお子さんが見てみたいです。

栗林さんも産休育休の間にいろいろお考えになられていろんな取り組みをされてるようですけども、そのあたりを聞かせていただいてよろしいですか。

栗林:ちょうど産休前に私が尊敬しているある方の講演を伺ったんです。そのころは、子どもを産んだら一歩下がるというか身を引かなくちゃいけないんだろうなと思っていたんです。でもその講演で、子育ては留学期間だから、そのときしか学べないことをたくさん学んできたらいいよと言われ、あ、なるほどと。海外には行けないけど、確かに全く違う世界に足を踏み入れるという意味では、その留学期間っていうのはまさに言い得て妙だなと思って。

それを聞いて自分の産休育休のコンセプトを「育休中を留学中に」しようと。これまでと全く違う世界に足を踏み入れて、どんどんそれを吸収してパワーアップして戻っていこうといろいろ活動してました。

その一つが、「アニバーサリープランナー」講座です。たとえば結婚式だけがきらびやかなのではなく、誕生日とか他の記念日とか、その人ひとりひとりの人生の記念日を大切にするような、人の記憶に残るお仕事ができたらいいなと思っていて、産休直前からこの講座に通いはじめて資格を取りました。産休の翌日がその「卒業パーティー」だったんです。私の「留学」はそこからはじまりました。

ただ、里帰りして出産してというところで一時期かなりモチベーションがダウンするんです。実家に帰って確かに楽だったんですけど、もう社会と全く切り離された状態っていうか・・・。会社に行けば「栗林さん○○お願いします」という感じでなんかこう頼られているなとか、なにかこう貢献できているなというのを肌感覚で感じるんですけど、実家に帰ったら自分のやることがなくなって、私は何のために生きてるんだろうというか・・・。子どもが生まれるまでの自由な時間なんて本当に限られてるものだと今ならわかるんですけど、もうなんだかなんにも役にたってない感じ。お先真っ暗っていうか、もういない方がいいんじゃないかみたいなところで落ちました。でも出産したらもうそんなこと考えてる余裕なんてなかったんですけど。

そういうことが、このママボノとか、「育休プチMBA勉強会」という勉強会を立ち上げたりしたことなどの原点になったと思っています。そして、慌ただしくそれらを進めていたら、もういつの間にか復帰の時期になっていたという感じです。

―― 確かに産後に、そのようにうつ病に罹られたりするケースとか、よくニュースとかででてきますけども、そういうものを回避する方法としてもママボノに是非とも参加していただいて、社会とのつながりや自分の存在意義とか、そういうところも感じていただけるといいですよね。

栗林:そうですね。
私がママボノでプロジェクトマネジャーをやったときに、今でも覚えているんですが、そのメンバーといちばん最初にあったときに、完全に自信をなくしている顔をしていたんです。それは自分が実家に帰ったときの経験もあったんで、このままただ淡々とやって復帰してもいつか折れちゃうなというふうに思ったので、このメンバーたちがスムーズに復帰して、復帰後も楽しいと思ってもらえるように何か自分がいろいろ仕掛けていくのも仕事かなと思ったのを覚えてますね。

―― お話を聞いてる方々は、おふたりともとんでもなく志が高くて、本当の貪欲に自分のスキルアップにお時間を使われているなっていうイメージをお持ちだと思うんですけど、ママボノのチームは、すべてそういう方々だったんですかね。
社会復帰にむけての予行演習というか、助走期間をもつために活動するという方もいらっしゃるとは思うんですけども。どういうグループ構成で、どうような方々がいらっしゃったんでしょうか。

栗林:私と荒川さんと、あとは全く別の業種、職種の人たちが集まっていました。みんな予行演習という位置付けで来たと思うんですが、進めてみると結構みんな熱中して予想レベルを遥かに超えるというか、熱気がありすぎてちょっと一回パワーダウンしようとか、休みを入れようっていうぐらいみんな燃えていて。実は、予行演習って言いながら、熱くなるものを求めてたんじゃないかなと

―― おそらく、初めてチャレンジされるので、自分の時間の使い方とかもわからない状態で入られて、それがちょっとやってみたら意外と時間をさけられることがわかったのでしょうかね。

栗林:そういう部分があったのかもしれませんね。メンバー1人1人のモチベーションとか1人1人にその力を発揮するためにその環境を用意するっていうのをすごく意識していました。思ったよりもみんなが予行演習をはるかに超えたレベルで、プロボノ以上のママボノで、かなり熱かったです(笑)。

―― はい(笑)。じゃあちょっとプロジェクトの方に進めたいと思います。共通で取り組まれた「NAGOMI VISIT」ですが、こちらの事業の内容についての話と、どういうことをやって、どういう形で役割を果たされたかというのを教えてもらってよろしいですか。

荒川:「NAGOMI VISIT」さんは、海外から日本にいらっしゃる旅行者が、ホームステイではなくてもうちょっと短めの夕食や団欒を一般家庭でできるように、旅行者とご家庭のマッチングをされているNPO法人です。面白かったのは、代表の方は海外にいて、スタッフの方は1名日本にいて、会議は常にSkypeで運営していることです。

で、私たちママボノプロジェクトの目標は、受け入れ家庭、とくに地方での受け入れ家庭をもう少し増やすことでした。あとは、子育て家庭にたいして、このホームvisitについてどう思うか調査をすることでした。

栗林:付け加えるとすれば、ほかには、地方のホームvisitのニーズ。どうしても都心で考えがちなんですけど、海外から来る人は広島とか北海道とか東北とか、あらゆる地方に行きたいんですけど、受け入れ先がなかなか難しくて、それをどうやって増やすかというのが課題でした。

なのでその部分を調査してご提案をするというところと、あとは、受け入れ先になるのに仮登録があってその仮登録をしたまま、何か一向に本登録にならない。その理由を探る調査と課題を洗い出してご提案もしました。

―― なるほど、その仮登録される方はまだ実施はされてないのですね? それをどうしたら今後受け入れ先になってくれるかどうかというところをお手伝いされたのですね。

栗林:はい。

―― ちょっと初歩的な質問をしてしまうんですけども、受け入れるのは日本にいらっしゃる方ですよね、受け入れる方には、どういうメリットがあるのでしょう?

栗林:ホームステイだとどうしても1週間とかちょっと長めのスパンで外国人を受け入れる必要があるんですけど、初めてそれをされる方でいきなり1週間なると、結構ハードルが高いです。
さっきちょっと荒川さんが説明したように、ご飯を一緒に食べる間、日本の文化を教えてその外国の方の文化を教えてもらって、短時間で、お互いの文化が知れるっていうところはかなりメリットかな。

―― 当然言葉の壁もあると思うんですけど。例えば英語を話せる方、話せない方。そのあたりうまくマッチングできる方法というのはあるんでしょうか。

栗林:外国人ビジターからいただくプロフィールは全部英語なので、それを見て受け入れるかどうか決めてもらいます。それをある程度読めるかた。でもGoogleの自動翻訳を使ってやっと読める程度でも受け入れた方もいらっしゃいます。必要最低限の会話だけでも結構楽しめましたという方もいました。

NAGOMI VISITの受け入れを機に、ちょっと英語を勉強してみようかとか、家族で受け入れたときに、子どもの勉強意欲の動機付けになったという方もいらっしゃいます。

―― あとちょっと気になるのは、危険というか、やってみたけれどもなんかちょっと問題が起こっちゃったとか、そういうことの回避方法とかをちょっと教えてもらってよろしいですか。

栗林:実際受け入れに当たっては、マニュアルもつくられているので、ある程度そのとおりに進んでいけばそんなに大きなトラブルは起きないかなと思っています。実際にはそのお客さんが当日キャンセルしちゃったということもあるんですけど。問題が起きてしまった場合は、Nagomi visitの事務局が間に入ってサポートしてくれる体制になっています。

―― ありがとうございます。おふたりはこのプロジェクトに、それぞれプロジェクトマネージャーとマーケッターで関わられて、おそらくそこでは今までのスキルを活用できたり、反対にそこで学んだこととかあったりする思うんですけど、そのあたりを教えていただいてよろしいですか。では荒川さんから。

荒川:私は先ほどお話した通り、スキル登録のときに自分のスキルは何だろうと結構迷って登録した部分もありました。まあ、マーケティング調査っぽいことなら前職でやったしなーぐらいの気持ちでマッケッターの役割につかせていただきました。

今回のNAGOMI VISITでは、大規模なデータを分析するいうよりは個別の質的なインタビュー調査だったので、これまでの経験も生かしつつ、ほかのママボノの皆さんと相談しながら成果物をつくっていったような形でした。

―― やはりこれまでの仕事の方と、NPOの方々などとでは接し方とか違うとか、そのあたりでお困りなられたことはなかったですか。

荒川:すでにホームvisitの受け入れをやってくださっている会員の方々へのインタビューをさせていただいた際には、私たちが間に入ってお手伝いしていることをお伝えすると、主催するNPOには言いづらいことでも、こんなことで困っているとか、もっとこうしてほしいとか率直にご意見をいただくことができました。

―― ほんとにもう本心というか、カスタマーインサイトと呼びますけど、そういう本当のところが確認できてフィードバックできたようなイメージですかね?

荒川:そうできるように努力しました。

―― 栗林さんは、プロジェクトマネジャーとして今までの仕事が役立ったところとか、ママボノを担ってみて仕事に還元できたところはありますでしょうか?

栗林:そうですね。会社でもプロジェクトマネジメントを幾つかやらせてもらっていたので、ある程度ママボノでもプロジェクトマネジャーとして展開できたかと思います。

それと、ちょっと自分が気をつけていたのは、自分がプレーイングマネージャーにならないようにすることでした。そうなってしまうと確かに同じ目線でプロジェクトを進められるんですけど、そこまでにしかならないというのはわかっていたので、自分はちょっと視点をあげて、そのプロジェクトの成果物だけでなく、そのプロジェクトのメンバーがやってよかったなとか、ちょっと成長したなと感じてもらえるような環境づくりを、かなり意識してやりました。

というのは、会社のプロジェクトやってた時にやっぱりプロジェクトを納めるだけじゃなくて、事業の成長は人の成長なくしてはないというふうにすごく感じていたので、仕事に戻ったときに、この経験が少しでも糧になるようにかなり意識してました。なので、相当うるさいプロジェクトマネジャーだったと思いますね(笑)
振り返りやれとか、戦略的に配置転換とかもしたりとか。
通常のプロボノのプロジェクトマネジャーならやらないかもしれないことを結構いろいろやったりしてました。

メンバーたちと本当は何で働いてるんだっけとか、全くの仕事と関係ない質問を入れたりして。とにかくそのメンバーに少しでもメリットがあるように、少しでも経験が生きるようにという点は常に意識してました。

復帰後は、自分がただ仕事をやるわけじゃなくて、自分がやってたことやスキルを抱え込まずに、後輩にどんどん移行して、自分はもっと価値あるのものを生み出すことに集中して取り組むというふうになりました。それまでは全部自分でやっていたんです。もうすべて自分で、時間があるだけ、本当に残業やりまくりっていうか、それができたのでやってたんです。なので、その部分はママボノの経験がいかせてるかな。

―― それだと人材の育成もうまくまわりますね。

栗林:はい。

―― 荒川さん、いま、栗林さんはご自分でうるさいプロジェクトマネジャーだとおっしゃってましたけど、ほんとうにそんな感じだったですか(笑)

荒川:私も、実際にこの機会に初めて、マネジャーたる人が何をしてるかってことを客観的に考えた気がしたんですね。管理職の仕事とは何なのかを考える機会って一社員だと実はあまりないのではと思います。栗林さんはそれを虫眼鏡でみるように可視化してくださいました。優秀なマネジャーとはどういうことをする人なのか、ということをすごく感じることができたんです。

それは私たち1人1人が、他のチームの動きや自分たちの動きを共有するためにはどうしたらいいかとか、モチベーションを保つにはどういう機会を設けたらいいかとか、同僚同士が話し合えて円滑に仕事が進められるようにするとか、あとそれを一つ一つクライアントであるNPOとどういうふうに共有するかというのをちゃんとみんながわかるようにしてくださったので、マネジャーってこういう仕事なんだなとすごく勉強になりました。

―― 今からプロジェクトマネジャーをされる方もやはり色々不安を持たれている方もいらっしゃると思うんです。先ほど栗林さんが環境の話をされましたけども、この環境づくりって簡単におっしゃいますけど、非常に難しいと思うんですよ。
おそらくそのチーム員の個性で答えがこれだっていうのは決まってなくて、トライアンドエラーでいろいろやられたと思うんですけど。
そのあたりの工夫点とか、非常にうまくいったという事例があったら教えてもらっていいですか。

栗林:幾つかあるんですが、まず、人員を固定しなかったというのはよかったかなと思っています。

NAGOMI VISITには、潜在顧客のニーズと、地方在住のニーズと、仮登録から本登録にするにはどうしたいかという三つの課題があって、チームも三つに分けてました。
当初は、皆さんには言ってなかったんですけど、中間報告が終わった後に配置転換をしました。そのころまでにはそれぞれの動きや個性を何となくとらえていたので、みんなが中間報告を作っている間、いちばん成果を出すためにはどういうふうにメンバーを配置転換したらよいか、あるいはその人のためになるかっていうところを考えて、報告後に配置転換をしました。

あとは、リアルタイムで会わなくてもプロジェクトがすすむようにするために、スカイプやメールとかいろいろなツールを駆使したり、仕組みでカバーをするようにしていました。

―― チーム員の方のモチベーションの確認や、それぞれのスキルの確認をする際は話し合いの場を持たれたのでしょうか?

栗林:皆さん子育て中なので、30分だけでも直接会うってことがもう本当にできなくて…。そこら辺はメールで今どういうモチベーションなのかとか、いろいろこちらから聞きたいことを聞いて何日までに提出してくださいと。その返事をもとに普段の様子とかも見て決めていきました。

―― みなさん、かなりモチベーションは高く維持できたのでしょうね。荒川さんも。

荒川:全体的には高かったとは思いますが、やっぱり子供が具合悪くなったとか、なかなか寝ないとか、ちょっと旅行に行きますとか多分個人個人のモチベーションの波はマネージャーから見たら結構あったんじゃないかと思います。
けれどそれを全体としてパフォーマンスを下げずに、年末年始のお休みはみんなで休んでもう一回頑張ろうとか、この人は今ここにないけど他のみんなでカバーしようとか、そういったこともかなり配慮して下さったなと思います。

―― なるほどですね。

栗林:だからもう休みたいときは必ず言ってくださいと。ぜったいに休みにするからと。あとはひとりだけで抱え込まないというのも大事かなと思っていて。必ず1チーム2名以上の体制で進めて、自分がいなくなってもちゃんとできるようにっていうのは常に常に言ってます。

―― これだけチーム思いで、もう本当に素晴らしい方々ばかりで、チーム構成も素晴らしくできてるんですけども、最終成果物を納める先の方々にいちばん最初にお会いしたときに感じたことはありますか? たとえば、ママボノとしての立場などをお話されたと思うんですが、そのときの先方の期待値とか納品したときとのギャップだったりとか、そのあたり荒川さんいかがでしょう。

荒川:NAGOMI VISITさんも女性2人で事務局をされてたんですけど、やっぱり最初はママボノメンバーで、子連れで訪問して赤ちゃんギャーみたいな感じだったので知ってはいたけどちょっとびっくりみたいなところは実はあったんじゃないかなと思うんです。

成果物に関しては、すごく評価して下さったなと感じています。
先日、私たちが昨年提案したことでその後どういうふうに進んでいるかという振り回の会をしたときも、すごく詳細にいろいろ進捗を下さったりとか。でもそれが予想とどうだったか、そこまでは聞けてないんですけど。栗林さんはどう感じました?

栗林:本当に最初、子連れでみんな赤ちゃん抱っこしながらとか、おんぶしながらとか、そこに赤ちゃんが転がってる状態で中間報告をして…。
そういうママボノのプロジェクトでNAGOMI VISITさんの課題を進めていきますといったときに、おそらく「ママボノ」という何かこう漠然としたイメージで本当に大丈夫なのかというかっていう不安と、NAGOMI VISITたちが持っていないようなママの視点でどういう提案をしてくれるんだろうっていう期待と、どっちもあったのかなと思っています。

そのプロジェクトの最終報告のときに、かなりみんな熱気につつまれて、モチベーション高くやっていって、最終的に50ページ以上の報告資料になってしまったんです。そのとき先方からは、まるでNAGOMI VISITの一員かのようにそこまで考えてやってくれるなんて思ってもみませんでしたみたいな感想をいただいて・・・。
我々も、最後のほうになると、サービスグラントのママボノのメンバーでありながらも、NAGOMI VISITのメンバーのようなモチベーションになってたので、一体感といいますか、そういうのはすごくあったかなと。

――うーん。
ちょっといじわるな質問かもしれませんが、例えばこれがママボノではなく男性が2人ぐらいチームにいたとしたらその成果物は変わってきたりしたんでしょうかね。

栗林:いい意味で変わっていたかもしれないですね。ママの視点で提案をさせていただいたんですけど、そこにその男性の視点も加わることで、また違った視点で提案できたのかなと思います。

―― 荒川さん、どうですか?

荒川:メンバーが変われば変わったなりのアウトプットの変化はあると思います。でも、今回学んだのは時間をかけて成果物をつくればいいっていうことではなくて、やっぱりいかに時間の制約があるなかで自分たちなりのものをつくりあげていくことだったと思うので、メンバーが変われば変わると思いますけど、どれもいいし、どれも正解だと思います。

―― 確かに、メンバーによって伝え方とか伝わりかたが何か違うのかなといまなんとなく感じました。
なにかそのママボノメンバーならではの強みはここだなと、一言で言えるものはありますか。

栗林:やはりママの視点というのは強みだったのかなと。あと、たとえば児童センターとかにMAGOMI VISITさんのチラシを置いてもらうにしても、全部リスト化して1個1個アタックしてっていく。そういう行動力はすごく強みだったのかな。

荒川:あとはやはりママならではの連帯感があって一体感を持てるようなチームで取り組めるっていうのは一つ強みでもあるのかなと。そのあたりは通常のプロボノされた栗林さんの方から一言お願いします。

栗林:今回、ママの視点で課題を発掘して提案してくださいっていうのがあったので、例えばここに男性がいたとしても、たぶん自分のプロジェクトマネジャーをやってたのと同じような動き方をすると思いました。
あとは、保育園受かった落ちたっていう時期で、同じ保育園問題を抱えてたのでママさんとの連帯感は普通のプロボノよりあったと思います。

―― なるほどですね。はい。たしかに市場調査に女性の方に入っていただくっていうのが主流だったりしてますが、やはりおふたりからいただけるパワーの強み。私の周りにいるモチベーションの高い男性とはなにかちょっと違うモチベーションをお持ちなんですよね。おそらくそういうところとが融合されて、女性ならではの視点でプロジェクトがまとめられて相手に伝えられたというのが一番良かったのかなというふうに今感じました。

今度私もプロジェクトをひとつ始めるんですけど、そこにママボノを一回やった人が入ってくるんです。何か僕にアドバイスないですかね(笑)。こういうふうにしたらうまくいきますよみたいなことを教えていただけると嬉しいです。

栗林:ママさんって、時間的制約はあるんですけど、やることはかなりきっちりやるので出してくるアウトプットをぜひしっかり見ていただきたいなと思います。
あとは、時間的制約があるのでチームでフォローしていただけるとママさんもモチベーション高く、いいアウトプットを出してくれるのかなと。

それとあと、あまり過剰な配慮は要らないのかなと思っています。もうその人自身がやりたいと思ってやってるので、ママだからそこまでやらなくていいよと言うんではなくて、その人がやりたいことをどうフォローするかをみていただけるといいかと思います。

―― ありがとうございます。荒川さん、アドバイスお願いします。

荒川:いまほんとうに栗林さんが言ってくださったとおりです。

―― はい。ちょうどお時間になりました。聞きたいことがいろいろありすぎて方向があちこちに行ってしまったんですけども、僕としては聞きたいことが聞けて良かったかなと思ってます。ありがとうございました。

(放送日/2016年5月17日(火)8:00〜8:55)

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テキストライター/細川 美津子さん

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