【禍話リライト】『焦げ臭』『酒入り』
宗教によって形式は違うが、古くは死者を守ることを意味する通夜や、荼毘に付す火葬。
故人に別れを告げる告別式などを行う公営斎場にまつわる短い二つの話だ。
焦げ臭
現代の火葬施設では煤煙の減少や臭気の除去技術が発展し、臭いが近隣へ漏れないようになっている。
斎場の近くに引っ越したAさんの話。
引っ越しをして数日後、焦げ臭さが鼻をついて目を覚ますことがあった。
「火事か!」と焦って起き上がり外を確認するも見渡せる範囲でそれらしい様子もなく、そんな話も聞かない。
決まってこの焦げ臭さで目を覚ますのは、近くの斎場で葬儀が行われる日だという。通勤路で斎場の前を通ると、葬儀を行っている様子が目に入る。
だが、臭いは葬儀がある日だから、というわけではない。
Aさんが引っ越しをして暮らし始めてから二年ほど経ち、葬儀のある日、焦げ臭さで目を覚ます日、やっと臭いを感じるときのパターンが分かったのだという。
焦げ臭さがあったときとないとき、葬儀の様子が違うのだという。
臭いがない日の葬儀は悲壮感に包まれ、故人を偲ぶ様子が無関係のAさんにもありありと伝わってきた。
臭いがあったときの様子はというと、義務感で行っているような、弔辞は棒読みなんだろうな、インターネットで拾ってきた文章をそのまま読んでいたんじゃないだろうか……そう思ってしまうような雰囲気だという。
「故人がそんな雰囲気を不服だと感じたんだろう」
Aさんはそう締めくくった。
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酒入り
祖父を肝硬変で亡くしたBさんの話。
通夜の後の深夜、弔問客も帰り、祭壇に安置された亡き祖父を寝ずの番で線香を焚き、斎場に泊っていたときのこと。
ついうっかり転寝してしてしまったBさんが目を覚ますと、妙にのどがいがらっぽい。線香やろうそくの煙にやられてしまったようだ。
(たしか冷蔵庫に……)
祭壇がある広間の隣の部屋には親族が集まる宴会場のような場所があり、そこには斎場が用意してくれた飲み物があったはずだ、と。
線香も寝ずの番用の消えづらいものだったので、問題ないだろうとBさんは冷蔵庫へ向かった。
寝起きの少しぼんやりしたBさんが冷蔵庫を開けると、中にはビールやブランデーの瓶が冷蔵庫いっぱいに詰められていた。
えっ、と驚いたBさんが反射的に冷蔵庫を締めて、再び開けると、中にはお茶やジュースのペットボトルが並んでおり、アルコールの類はなかった。
(あぁ、お祖父ちゃんか……)
Bさんの祖父は病に伏してから亡くなるまでの間、大好きだったお酒を飲めなかったという。
「祖父の願望でも見ちゃったんですかねぇ……」
Bさんの体験した不思議な葬儀の話。
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この記事は、ツイキャス「禍話」のyoutubeチャンネル、『禍話の手先』様
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から書き起こした二次創作となります。
該当回『禍話 フィアー飯スペシャル』
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1時間35分14秒あたりからです。
タイトルはドントさんのツイートから拝借しました。いつもありがとうございます。
https://twitter.com/dontbetrue/status/921408835465633793?s=20
有志による禍話簡易まとめwiki
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