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オン・ザ・ロック by ボッテガべネタ & カッシーナ

2024年のカッシーナは、コルビジェのデザインスツール TABOURET CABANON をボッテガベネタとのコラボにより発表した。

晩年コルビジェが過ごした、カップマルタンの休憩小屋に彼がデザインしたスツールである。
ウイスキーを保管する木箱からインスパイア―を受け、スツールをデザインしたそうだ。コルビジェが実際に着想を得た木箱も展示されていた。箱の中につき板を貼り、木の木目の上に、目を描いたそうだ。まさに木目である。

ウイスキーケース

老舗ブランドの強みは、背景にある壮大な歴史であろう。創立者の伝記であったり、デザイナーとの逸話、過去のマスターピース、失敗談、など過去に起こったすべてがアイデアソースの源となる。彼らにはアイデアソースのアーカイブがあるのだ。前に紹介したMOOOIなどの新興勢力とは違うベクトルでアイデアを生み出すことが出来る。この場合老舗ブランドは、ファンタジー(空想)に加えストーリー(歴史)もブランディングに活かすことが出来る。

1927年創業のカッシーナには100年近い歴史がある。デザイナーはその歴史を理解し、カッシーナ"らしさ"をプロダクトに落とし込む。ピエロリッソーニなどの著名なデザイナーは複数の企業ブランディングを担当するが、どれも一緒にならないのは、「らしさ」つまり各ブランドの歴史を軸としてデザインしているからであろう。

今回のテーマは「On the rocks」
ウイスキーを連想するワードである。
コルビジェがインスパイア―されたウイスキーボックス。彼がボックスを突板で覆ったのと同様、ボッテガが彼のスツールをPVCビニールで覆う。

テーマのオンザロックにあるように、展示会場は2つの大きな岩(スツール)の上に、新作スツールが乗っている構成となっている。

Bottega Veneta's new stool stands on the rock of Le Corbusier's stool.

コルビジェのスツールを構成する要素を分析してみよう。
ヨーロッパでは一般的なオークの板目材で比較的安い素材である。
表面をバーナーで焦がして、木目を強調している。
この角材の四方をほぞ継ぎにより接合している。接合には非常に高度な技術が必要である。
一方ボッテガのスツールはPVCシート(塩ビシート)で出来ている。これも非常に安価な素材だ。しかし、PVCの編み込みはボッテガの高度な技術により支えられている。
中にある構造体を、黒のPVCで編み込んでから、塗装を施しているようだ。
最後にコーティングしている模様。

両スツールとも同じアイデアで構成されているのが分かるだろうか。


チープな素材を使い、高い技術で作り上げるのはアイロニカルで面白い。
消費者は素材としての価値よりも、ストーリや意味に価値(付加価値)を見出すのかという挑戦のようにも見える。コンセプトと技術力が詰まった商品である。


展示会場を出る手前で、今回の展示のガジェットを配布していた。Bottega Venetaと書かれたグリーンの円柱。。。。。
はっ! これは ウイスキーボトルではないか。

ちなみに中身はポスターが入っている。
ウイスキーの様に数十年寝かせることで、プレミアがつくのであろう。

グラスの中の氷が解けるたび、香りが変化するウイスキーの様に、
じわじわと味わい深い展示でした。


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