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石神井公園団地の建替え事業〜Brillia City 石神井公園 ATLAS〜

分譲マンション建替えの実情についてご存知でしょうか?
実はほとんど建て替えられていないのが現状です。2022年時点で築40年以上のマンションは115.6万戸ありますが、累計で270件・約2.2万戸しか建替えられていません。
建替えに至るまでは居住者の負担額が大きい、建替え決議まで多くの段階を要するなど様々な課題があるため、まだまだ建替えが進んでいないのが現状のようです。
そういった状況の中、大型団地の一括建替えを実現した「石神井公園団地」の建替え事例を紹介したいと思います。

石神井公園団地は東京都練馬区に位置している、1967年竣工、敷地面積42,365㎡、総戸数490戸(RC造地上5階建、全9棟)の日本住宅公団により分譲された大型団地です。団地の近くには石神井川や石神井公園があったりと、23区内でありながらも自然豊かな立地です。
平均床面積は約70㎡と当時としてはかなり広く、立地にも恵まれているため人気な分譲団地でした。

石神井公園団地

そんな立地、住環境共に恵まれている石神井公園団地ですが、竣工から相当年を経過すると、建物・設備の老朽化、住民の高齢化など将来への不安が増していきます。そうした中、管理組合は2007年に建替・修繕検討委員会を設置し、以下のようなスケジュールで建替え事業を進めていきました。

事業スケジュール
2007年:建替・修繕検討委員会を設置
2010年:建替え推進決議
2015年:東京建物株式会社、旭化成不動産レジデンス株式会社、株式会社URリンケージの3社を事業協力者として選定
2019年:建替え決議
2020年1月:石神井公園団地マンション建替組合設立
2020年10月:解体工事着手
2021年7月:本体工事着手
2023年9月:「Brillia City 石神井公園 ATLAS」竣工

この事業の特徴として、建替え決議の賛成が9割以上だったことが挙げられます。建替え要件として「すべての区分所有者の5分の4の賛成」が必要ですが、本事業は大幅に賛成が上回っています。当初の建替え希望者は6割ほどでしたが、建替え勉強会を重ね事業協力者3社のサポートを受けることで賛成が9割以上に至ったようです。
こういった経緯を見ますと、時間をかけて居住者の理解を得ることが大切だとわかりますね。

建替え決議の翌年2020年10⽉、団地のシンボルであった給水塔の解体作業をオンラインで見ることができる「団地お別れイベント」を実施しました。会場には巨大モニターを設置し、団地の思い出を語るトークセッションや、お別れムービーの放映など団地の54年にわたる歴史を振り返りました。
また、竣工に伴い2023年11月に居住者同士のコミュニケーションの活性化を目的に竣工イベント「SHAKUJII HAPPINESS FESTA」を開催しました。
こういった取り組みはとても素敵ですよね。住民に愛されてきた団地を建て替え、次の世代にも愛されるものを造っていくためには、こうした”ソフト”の取り組みが今後重要になっていくと思います。

団地お別れイベント

建替え後のマンションは、地上7〜8階建・844戸とスケールは大きくなりましたが、全棟南方位かつゆとりある配棟計画となっています。また、団地から移植した樹木を含む敷地内緑化により、豊かな自然に囲まれた住環境です。
こういったその土地を継承した計画はとても大事ですよね。団地の良さである、ゆとりのある配棟、豊かな屋外空間がしっかりと受け継がれています。

共用部では「キッズルーム」「パーティールーム」「スタディルーム」「ゲストルーム」「フィットネスルーム」といった多様な施設を備えることにより、居住者間のコミュニケーション醸成を促しています。また、近隣のスーパーから若干の距離もあることから、マンション敷地内にミニスーパーが開業予定となっています。
敷地内に多様な施設があることはとても魅力的ですよね。

キッズルーム
ゲストルーム

今回の事例を参照しますと、建替事業を実現することにおいて住民同士のコミュニティがとても大切であることが分かります。
2023年11月に実施された竣工イベントでも、「100年続くコミュニティ」をテーマにトークイベントが実施されました。トークイベントでは、建替えによって若い世代の入居が増えたこと、団地で開催していた夏祭りを引き継いでいくために広場を設けたことなどが挙げられていました。

今後の展開として、前住民の比較的高齢な方と新しく入居した若い世代の交流が鍵になってくると思います。建替事業は建て替えて終わりではありません。夏祭りといった歴史のある催しを引き継ぐとともに、今の時代に合ったコミュニティ施策が重要になってきます。
今後「100年続くコミュニティ」がどのように発展していくのか要注目です!


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