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今季イチ推しの深夜ドラマ「消えた初恋」に見る、少女マンガのすごさ

 最近、土曜の深夜が楽しい。テレビ朝日系列で23時半から放映されている「消えた初恋」を観ているからである。なにわ男子の道枝俊佑と、SnowManの目黒蓮が主演している。

 少女マンガの実写化というと、安易なものだと思われるかもしれない。ところが、これが面白いのだ。主演の二人が原作の雰囲気にぴったりで、脚本もよくできている。

 「鬼滅の刃」アニメ版と同じで、ていねいに作られているのだ。ちなみに私は鬼滅も観ている。テレビ版「無限列車編」のために、わざわざオープニングとエンディングの歌を新しく作っており、しかも素晴らしい曲だ。

 「消えた初恋」の場合、まずタイプの違う二人のイケメンだというだけで眼福。思わずニヤケてしまう。やはり映像作品は主役の顔が大事だ。NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」は戦争の描き方がとても良かったが、主役の配役ミスが痛い。

 「消えた初恋」はニヤニヤしながら観るドラマで、私も娘もいつの間にかニヤニヤしている。ニヤニヤ系ドラマというのは新しい分野で、画期的である。ひと時、夢の世界に浸れるという点で近来の傑作というべきだろう。

 男子高校生同士の淡い?恋と、それを見守る男女の友人たちが醸し出す優しい世界が魅力だ。しかし、BL枠というのとは少し違う。あくまで少女マンガなのである。私はこのドラマを観て改めて、日本の少女マンガが持つ力を再確認した。

 男性が描くと面倒な上下関係になりがちな男同士の関係も、あくまで平等。男同士の性的で不快な会話もなし。汗臭さもなし。あくまで爽やかだ。このきれいさは少女マンガ独特のものである。

 とかく夢の世界、虚構だとみなされがちだが、少女マンガの世界は現実逃避ではない。意図的に構築した世界なのである。まだまだ女性であることで様々な制約が課せられる中、女性たちが生み出してきた理想の世界。それが日本の少女マンガなのだ。

 70年代に御三家が登場して以来、日本の少女マンガは多くの名作を生み出してきた。これは世界のどこにもない文化である。しかし世界はまだその力を知らない。発見されていないからである。いつか、世界はこれを発見して驚くだろう。

 発見してくれるのは、きっとフランスだ。私はそれを期待している。フランスは浮世絵を発見してくれた国だ、今は、日本の不良マンガが大人気だと言う。

 少女マンガの世界でBLものを最初に描いたのは竹宮惠子で、「風と木の詩」は昭和51年(1976年)から連載が始まっている。BLものの、まさに金字塔とも言える作品である。今から45年前なのだから驚く。

 娘の本棚には、少女マンガの名作がずらりと並んでいる。私は布団に入ると、眠くなるまで少女マンガを読む。今読んでいるのは、佐々木倫子の「動物のお医者さん」。もう30年前に連載が始まった話なのに、色褪せない魅力に驚く。

 さて、このドラマが成功したもう一つの理由は、製作が角川大映スタジオだということだ。最後に出る、この名前を目に留める人は少ないのではないだろうか。

 当然ながら、ドラマは製作主体がある。テレビ朝日系列だからと言って、テレビ朝日がが製作しているわけではない。さまざまな製作会社が、下請けして製作しているのだ。

 彼らは少ない予算の中で苦闘している。ここが日本のテレビ局のだめなところで、才能のある人間がいるのに、日本のドラマは韓国に負けているのである。製作現場にお金が回っていないのだ。

 全国ネットのキー局正社員が、30歳で年収1千万に迫る一方で、実際に作っている製作会社社員の給与はその半以下。しかし、力量は製作会社社員の方が上なので、かれれが新入の正社員に仕事を教えている。

 「消えた初恋」を製作している角川大映スタジオは、昭和8年(1933年)に設立された日本映画玉川撮影所を源流に持つ。日本映画の興隆期を担った、今はなき大映のスタジオである。テレビ局が誕生するより、ずっと以前から存在していた老舗だ。

 ちなみに「相棒」は東映が製作している。どちらも映画会社の老舗スタジオである。テレビ朝日やフジテレビ、日本テレビの若手社員など、足元にも及ばない製作ノウハウを持っている。ちょっとしたカメラワークなどに、受け継がれた技術が現れている。

 「消えた初恋」はテレビ局と製作会社に、ていねいに作るという合意が形成され、ジャニーズ事務所もそれに同調した成功例である。これがモデルケースとなって、今後もいい作品が生み出されることを期待したい。

 正直言って私は今まで、SnowManにはラウルの印象しかなかった。今回、このドラマで目黒蓮を発見したのである。この貴重な素材を大事に育てて欲しい。次は「おそ松くん」でチョロ松を演じるそうで、がっかりしている。

 このイケメンを、そういうふうに使うかね。そうでなくても目黒蓮は猛烈な忙しさらしい。すでに激痩せの兆候が出ている。頼むから使い潰さないで欲しい。世界に出せる素材なのだから。

 SnowManは様々な傾向の歌を歌っていて面白い。なにわ男子はかわいい。虚構だとわかっていても、ピンクのキラキラ系は楽しい。世界には通用しないかもしれないが、日本らしい良さがある。変に韓流化せず、このままの路線を歩むことを望む。なお、来週12月4日は午前〇時から特別編が放映される。

 
 

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