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オリジナル小説

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私の書いたオリジナル小説です。
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小説  ター坊 

 愛知県岡崎出身の父が、帰郷を望みながら亡くなりました。故郷と父母兄姉達と、父から聞いていた話に想像を膨らませてこの作品を書きました。  私はこの作品の架空人物であるポッポが、想像の中で勝手に動きまくられ、ター坊が小さくなってしまったかも知れません。  しかし明治維新は武士の全てが職を失い失業した時代です。武士の妻や娘たちの悲惨さを色々調べ、一生懸命生きた家族を書いたつもりです。読んでいただけたらとても嬉しいです。  画像は作品に出る味噌饅頭。子が幼稚園の頃に教わった茨城の郷

小説 恋だけ

これが恋 深い緑色の地模様のあるカーテンとカーテンの隙間から漏れる日差しがミイの顔に届いた。眩しさに朝の陽ざしを感じた。ミイは知らない匂いに包まれ目覚め、ぼんやり日差しの根元をたどると見知らぬ庭が見えた。  男の声が聞こえてきた。 「ごめん。下痢しちゃった。悪いが午前の仕事を変わってくれる?午後は大丈夫。宜しく頼む。」  ミイは漠然と、呆然という言葉が今の為にあると思えた。聞こえてくる男の声の顔が浮かばない。部屋を見回すとホテルに思えた。初めて見る天井、ミイは戸惑いながらも深

戯曲 1ページ

第1章 病室にて  陽ざしはベットまで注ぎ、カーテンが半分閉められている。  平成二十年三月下旬、東京近郊の高齢者用リハビリセンター二階の個室。  忠一がベットに座りテレビを見ている。  緩やかな、温かい時が流れている。 輝子「お爺さん、今日はどうですか?」 忠一「ああ、婆さん、来てくれたのか。待っていたよ。卵焼きを持ってきてくれたか」 輝子「はいはい、持って来ましたよ。由里子が温かいままで持って行けるようにと、こういうお弁当箱を買ってきてくれたから。お爺さんの大好きな

短編小説 嫉愛(しつあい)

前書き 『嫉愛』は私が思い付いた造語です。これは私が初めて書いた小説です。今はだいぶ穏やかになった私の性格ですが、昔は(笑) 私の付き合う人をずっと好きな女性がいて、その人が書く作品に、男性が思う女性として私が登場してました。 ずっと黙って流していたけど、当時は何となく悔しさと憤りがありました。『直接、彼に言ってよ!』と憤っていた私でした。 それがこの小説を書いたきっかけ。当時、彼女が言ってた理想がコレ?と書きました。私は小鳥の鳴くような明るい声の女性として登場