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飼育員に求められる能力とは

久しぶりのnote。今日はいろいろとあり過ぎた分、伝えたい思いが高まりました。”飼育員に求められる能力”これに関しては「私はそう思う」ということでご承知下さい。そう思わない人は無視してくれればいいです。

単純に能力といっても広いので、今回は「命を守るために必要な能力」ということに主眼を置きます。

業界内でよく耳にするのが…「ウチのは〇〇を食べない」
ハズバンダリートレーニングの進捗・成果に影響を及ぼす他、動物が採食不良に陥った際、与える飼料の選択肢もおのずと少なくなります。粗食に特化した考えの方もいますが、普段与えなくとも、食べられる飼料が多いことは私の経験上、窮地の際必ず役に立ちます。なので、私は必ず聞き返すようにしています。

「食べさせる努力はしましたか?」
「たくさんの飼料の中に〇〇をちょっとだけ混ぜ与え、その比率を徐々に高めていく中で、結果嗜好性が高い飼料になることもありますよ?」

動物は常に健康ではなく、尿や便の状態はもちろんですが、食べる量、食べる種類、さらには食べる順番などにも体調の変化が表れます。また、体調が悪化した際は食べられる種類が限られます。雑食はもちろんですが、草食や肉食であっても、たくさんの種類を食べられるようにすべきだと考えます。
それを前提に「その先の選択肢をどこまで増やせるか」それこそ、私が飼育員に求めている能力。そして日常的に率先して行動し、一番深く継承しようとしている技術です。

たとえばニンジンを好きな動物がそれを食べなかった場合、いつもの形状のニンジンを食べられない体調であることから正常でないことは明らかです。放置せず同僚や獣医師に相談するのはもちろんですが、担当飼育員は、相談前にまだすべきことがあります。単純に「食べなかったで終わらせない」ということです。状態の悪化と同時に、それがどの程度であるかを見極めなければなりません。その他飼料の採食状況の把握、さらには食べ方はどうかを観察し、その他飼料で一定の採食が確認された場合は次の行動に繋げます。

ニンジンの
・切り方を変えてみる
・ミキサーにかけてみる
・薄切り(細切り)にして柵にぶら下げてみる
・設置場所(ニンジンの)を変えてみる
・次に嗜好性が高い飼料を混ぜてみる
・芯が堅い場合は外側だけ与えてみる

これはニンジン以外も同様ですが、一種類の飼料について、与え方の選択肢を追求し、その上で「食べない」という判断をすべきだと思うのです。その選択肢の豊富さこそ、”飼育員に求められる能力”ではないでしょうか。今回はニンジンの嗜好性が高い飼料という前提ではありますが、口腔内にトラブルがあったり品質自体が問題の場合は上記いずれかの手法で食べることが多いですし、しばらく放置した後で食べた場合は、食べようとした時点で体のどこかに痛みがあった可能性が(この場合は一旦ニンジンを取り除き、動物が他の飼料を採食した瞬間、再度ニンジンを給餌してみる)。その全てにおいて匂いも嗅がない状態の場合、比較的早い治療が必要だと判断できます。さらに、治療が経口投薬となる場合、嗜好性が高い飼料を食べないのは時に致命的に。別の飼料を様々な手法で与えてみる…素早い判断力と幅広い選択肢、行動が求められるのです。

もっといえば経口投薬は飼育員の技術の見せどころ。動物に中身(薬)がバレるようではまだまだ…。私はバレずに動物に投薬が可能です。なぜなら、毎日投薬があることを想定した特別な飼料を与えています。実際に投薬が必要になったら、その”投薬を想定した飼料”の量を増やして混ぜるだけ。毎日食べている投薬用飼料の量が増えることにより、薬の味が限りなく薄まるため、動物は警戒どころか、その飼料が増えたことを喜びます。

これらについて「どこまですべきなのか」これは私たちの仕事では永遠の課題。でも、実際どこまですべきなのか、どんな選択肢がまだ残されているか、さらにはどこまでやっていいのかを示すことができるのは、組織はもちろん先輩の役目です。ですから、先輩職員の妥協点は非常に高い位置にあるべきなのです。

さて、”飼育員に求められる能力”
ニンジンを例に出してしまったので、狭い話のように思えてなりませんが…ニンジンでこれだけできれば、主たる飼料やペレット等においても「ウチのは〇〇を食べない」という安易な結論に達することはなるでしょう。食べないなら食べさせようとする努力をする。過程ではもちろん悩み、苦しみますが、その瞬間を、その精神を誰かと共有することができれば、技術は継承され、安定的な動物の幸せに繋がると思いませんか。当園のTeamキリンの凄さは、まさにこれにあります。いずれはTeam大森山の凄さにしなければ。

そんな自慢の大森山Teamキリンが出演する秋田市の広報テレビ。どうかご視聴下さい。RTでの拡散もよろしくです。(私はでません)

人工哺育ですくすく成長中! キリンの赤ちゃん “ケイタ”

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