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「AIきりたん」に見る2020年代の音楽制作

先日、私シバっさんのYoutubeチャンネルにて「AIきりたん」の使用解説動画をアップしたのですが、おかげ様で今話題のソフトだけあって、私の動画の中では上位を占めるスピードで閲覧数が伸びておりました。

シバっさんYoutubeチャンネル
↓↓↓
「DTM」マジですごい!無料ボーカルソフト【AIきりたん】使ってみた(使い方解説)

「AIきりたん」の凄さやソフトの詳細などは、上記の動画をご覧頂くとして
ついにAIがここまで来たか⁉と、業界関係者も驚愕している訳ですが
実は、非常に便利な反面、近い将来我々制作者や音楽家の存在意義自体も、揺るがされていく状況になって行くのは、想像するに難くありません。

AIに音楽家の仕事は奪われますか?

答えは「Yes」と言わざるを得ません。しかも、これは近い将来の話ではなく、既に現実に起こっています。
実際の例では、スタジオミュージシャンと呼ばれる演奏家の方々の仕事などは、1990年代・2000年代・2010年代と年を追うごとに減少の一途をたどっていますが、理由は至極明快で、DTMソフトや機材の進化によるものです。

具体的には、一流ドラマーが叩いたデータと、一流スタジオで録音した音源を元に作られたソフトウェアドラム音源などは、腕の良いクリエイターが扱えば、プロが聞いても生演奏か打込みなのかわからない程のトラックを制作する事が可能です。
しかもこれは、ドラムに限った話ではなく、ピアノ・ストリングス・ギター・ベースなど、現存するほとんどの楽器を網羅するだけのソフトウェアが、これを執筆している2020年3月現在で販売されています。

また、お仕事をご依頼頂くクライアントさんでも「仮歌はボーカロイドで大丈夫ですよ」という案件も増え、必然的にボーカリストはその分だけ仕事を失っているとも言える訳です。

あなたがプロデューサーだったとしたら?

上記の様な状況は、歌い手や演奏家としては受け入れ難いものですが、すでに現実としてソフトウェアに代替されてしまっている仕事は、業界の中でも多く発生している訳です。逆に考えれば

もしあなたがプロデューサーだったとしたら?
自分が育てているアーティストの楽曲制作の場合を考えた時
①「一流スタジオで腕の良いスタジオミュージシャンの演奏」
②「打込みだがプロが聞いても生演奏と遜色ない音源」

この2択があったとして

①前者は、
スタジオレンタル料=150,000円/日
レコーディングエンジニア日当=30,000円/日
スタジオミュージシャン日当=35,000円/日×4人
(ドラム・ベース・ギター・ピアノ)

②後者は、
DTMクリエイターへの音源制作報酬のみ

あなたがお金を出すプロデューサーなら、どちらを選びますか?

上記はあくまで大まかな概算ではありますが、予算が大きく取れる大手レーベルの人気アーティストは別としても、まだデビュー前の新人や、これからファンを獲得すべきアーティストなどは、思う様に予算を獲得する事ができず、ともすれば自費出版もあり得る状況で、後者を選択する事は、合理的であり、現状において賢い選択だと言わざるを得ないかもしれません。

一部の音楽家は近い将来AIに取って代わられる

これは脅しなどではなく、私自身も含めた現代のアーティストやクリエイター全てが考えなければいけない問題とも言えます。

ここまでの考察から、私なりに音楽制作の未来予想をしてみると
・自動作曲は当たり前になり、ニュアンスを伝えるだけで
 AIがユーザーの要望を曲にしてくれる。
・ジャンルや使ってほしい楽器を決めれば、自動的にアレンジだけでなく
 ミックスやマスタリングも完了している。
・5G(6G/さらに次世代)などの通信インフラにより、通信速度が爆上がり
 全てのソフトや機材はオンライン上で完結
・AIボーカリストはより複雑化し、一人に1キャラは当たり前

などでしょうか。

そんなバカな、妄想が過ぎる、と言いたくなる気持ちもわかります。
何を隠そう、私自身が声を大にして言いたい「そんばバカな!」

けれど、ここに列記した私の予想は、遅かれ早かれ実現される事でしょう。
音楽家としては非常に悔しくもありますが、技術的には既に実現されているものばかりで、否定の余地もありません。

我々、人間の音楽家はどうすれば良いのか?

ここまで読んでくれた皆さんにとっても、一番の気がかりはここではないでしょうか。
私自身の個人的見解も多分に含まれますが、誤解を恐れずに言えば

「人間はAIに勝てないが、AIは人間になれない」

これが全ての答えの様な気がします。
音楽には技術や知識、理論や感情など、とても数値化が難しい要素が多くありますが、きっと将来のスーパーコンピューターは、我々人間が不可能だと思っていた「感情」すら、いとも簡単に数値化して人間を超えるバリエーションを見つけてしまうでしょう。

けれど私達、人間の音楽家が目指すべきなのは
AIに負けない事ではなく
AIが決してなれない存在で在り続ける事

作り手として考えてしまえば、負けたくないと思って然りですが
聞き手として捉えた時、何をもってファンになるかを思い返すと
それは「誰がどんな想いで書いた曲」なのかを、心の中で探していたりしています。
これは、AIには取って代わる事の出来ない
逆に言えば、AIには必要の無い要素とも言えます。

つまりAIは、音楽を作る事は出来ても、音楽を聴く(楽しむ)事は出来ない、が
我々人間は、作り手であると同時に聞き手、だからこそ
「何を聴きたいか」を決める事ができるし、これこそが
「AIが決してなれない存在」だと言えるでしょう。

もしかしたら、いつか「楽器」や「作曲」などという概念すらなくなり
音楽理論など無くとも、誰しもがAIのおかげでアーティストになれる時代がやってくるかもしれません。
私が言うのも何ですが、その時に演奏力や経験・知識・技術などがあっても
意味をなさないかも知れない。

でも、だからこそ私は言いたい
「音楽を楽しめるのは人間だけだ」と。

私は既に仕事でも、AIに任せてしまえる作業は任せてしまっています。
悔しいけれど、AIに勝てない事はそうして行くし、今後もその割合はどんどん増えて行く事でしょう。
でも、それで楽になった分、私は音楽を「楽しむ」事にしています。

「それがAIへの対抗手段なのか?」と聞かれれば「否」ですが
AIには彼らが得意な事を、そして我々人間には人間にしか出来ない事を
互いを認め合い、互いを尊重できる「共存」こそが
これからの音楽制作に一番必要なのではないかと思う次第です。

最後までご覧頂きありがとうございました。
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youtube「音楽生活 シバっさんの部屋」DTM・作曲レクチャー毎週更新
シバっさんtwitter @shibassan_dtm

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