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【洋画】カッコーの巣の上で(1975)

監督:ミロス・フォアマン
出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー、ウィル・サンプソンなど
上映時間:2時間13分

「カッコーの巣の上で」鑑賞しました。二度目の鑑賞。アカデミー賞主要5部門を独占した不朽の名作です。

時は1960年代、アメリカのある精神病棟に、精神疾患を装って刑務所から逃がれてきたマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)という男が送られてくる。この精神病棟は看護婦長のラチェッド(ルイーズ・フレッチャー)の下、良くも悪くも規律に縛られた生活で、患者には主体性がまるでなかった。レクレーションの時間になるとマクマーフィーは身長2mほどあるネイティブアメリカンのチーフ(ウィル・サンプソン)に声をかけにいく。しかし彼は聾唖(ろうあ)で話すことも聞くこともできない。

精神病棟の規則に疑問を抱いたマクマーフィーは、皆が恐れているラチェッド婦長に反抗し、積極的に楽しむことを入院患者に訴える。テレビが禁止されている中エアーワールドシリーズ中継をして盛り上がったり、病院のバスを乗っ取り患者全員を海釣りに連れて行ったり。破天荒かつ社交的なマクマーフィーのやり方で、患者たちは徐々に主体性を取り戻していきます。聾唖のチーフもバスケットボールの試合でダンクシュートを決めるなど徐々に変化していきます。しかしこれまで気づき上げてきた秩序を崩していくマクマーフィーに、ラチェッド婦長は警戒心を高めていく。

まず第一にこの作品を完全に理解するためには当時のアメリカ情勢や、ネイティブアメリカンの悲しき歴史、そしてロボトミー手術について理解しておく必要があります。初めて鑑賞した時にはこれらのことを全く知らず、観終わった後に謎が残りました。

まずはチーフ演じるネイティブアメリカンについて。彼らはアメリカの先住民です。しかし大航海時代以降ヨーロッパ各国がアメリカにやってきて、国を植民地化します。先に住んでいたネイティブアメリカンは彼らからの迫害を受けたり、超過酷な強制労働をさせられたりして、人口は急激に減少し、彼らはアイデンティティーを失っていきます。上記を理解できてやっとチーフが精神病棟にいる理由や、父親の話が理解できます。

そしてロボトミー手術は1940~50年代に実施された、不安発作や妄想の症状がみられる患者に対しての治療法です。そのやり方は頭蓋骨に穴をあけ、、脳の前頭葉の一部を切り取るというもの。上記症状への治療薬がなかった当時は画期的な治療的であった一方、当時の精神病院では患者への虐待が横行しており、ロボトミー手術を個人的な理由で行うこともあったそう。術後の副作用には感情や気力、反抗心を失うという深刻なものだった。ラストシーンはこの前提を知らないと理解できません。

タイトルについても。邦題では「カッコーの巣の上で」となっていますが、オリジナルは「One Flew Over the Cuckoo's Nest」で、直訳すると「カッコーの巣から飛び立ったもの」となります。カッコーとは英語で「Crazy」を表すスラングで、カッコーの巣とは要は「精神病棟」のことを指しています。そしてそのカッコーの巣を飛び立ったのは…って考えるとおもしろい!

ジャック・ニコルソン出演作らしい怪奇的な映画です。婦長を含め精神がまともな人間がひとりもいません(笑)。そしてがんじがらめの病棟をマクマーフィーがぶっ壊していく姿は実に爽快です。船のシーンも最高ですし、病棟でパーティーを開く様子は名作インド映画「Munna Bhai M.B.B.S」の名シーンを思い起こさせます。というかムンナバーイーがこの映画から想起して作ったのだなと思いました。毎度ながらインド映画中心の思考ですみません(笑)

役者陣ではジャック・ニコルソンの怪演も然ることながら、ルイーズ・フレッチャーが素晴らしい。彼女はマクマーフィーとは価値観が違うだけで完全な悪人ではないのですが、それをあそこまで憎らしく思わせるのは凄いこと。彼女の存在はこの映画でかなり大きいものです。

「カッコーの巣の上で」は1960年代のアメリカで起きていたロボトミー手術、ネイティブアメリカン差別、精神病院での待遇などの問題を取り扱った、笑えて怖くて考えさせられる作品です。最後のシーンの伏線の貼り方も見事!



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