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【洋画】君の名前で僕を呼んで(2017)

監督:ルカ・グァダニーノ
出演:アーミー・ハマー、ティモシー・シャラメ、マイケル・スタールバーグ、アミラ・カサールなど
上映時間:2時間10分

イタリア映画「君の名前で僕を呼んで」鑑賞しました。実際はアメリカ・フランス・ブラジルとの共同制作とのこと。

時は1983年。北イタリアのある避暑地で、17歳の少年エリオ(ティモシー・シャラメ)が家族とともに別荘で暮らしている。彼はピアノ演奏や作詞、詩作、読書など多くの才能に長けていた。ある日考古学者である父の助手としてアメリカからオリヴァー(アーミー・ハマー)という24歳の青年がやってくる。彼は容姿端麗でかつ知性に満ち溢れた人物で、エリオは当初彼を疎ましく思う。しかし時が経つごとにエリオは自分の感情が抑えられなくなり、ついにはオリヴァーに思いを打ち明ける。実はオリヴァーも同じ気持であり、一旦は大人として断るが、最終的には彼を受け入れ二人は激しく恋をする。

とても文学的な作品です。エリオの父の研究対象であるギリシャ神話がストーリーに効果的に絡んできたり、ピアノの話や小説の話などでエリオとオリヴァーが中を深めていったり、僕の学問レベルが追いつかなさすぎて、最初観たときは何の話をしているかまったくわかりませんでした(笑)。しかも脳みそカラッポにしても理解できるコテコテのインド映画(Rowdy Rathore)を観た後だったので、急に高いIQを求められた感じでした。

全部見た後に解説を読みはじめて話が繋がっていきました。ギリシャ神話には同性愛の神が多く存在していて、実は同性愛を受け入れる土壌は現代よりも整っていたそうです。なのでエリオとオリヴァーの愛の象徴として、ギリシャ神話がよく引き合いに出されていたのです。二人の上裸シーンが多いのも、ギリシャ神話の神様のオマージュだと言われています。

そして劇中でオリヴァーが「万物は流転する」という紀元前6世紀の古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスの言葉を引用するのですが、それは彼の「気持ちは常に移り行く」という思想を表現しており、物語のラストにもつながっていきます。

そして作中では全く触れられていないのですが、知っておくべきは当時のアメリカにおける同性愛事情。当時はアメリカで半同性愛運動が高まり、1978年にはカリフォルニアで「教師が同性愛者を擁護するような発言をした場合、解雇することができる」というブリッグス法が制定されたり、1980年代にはいると「同性愛者の病」と呼ばれたエイズが大流行するも、当時大統領だったレーガンはそれを「不道徳な性行為による自業自得」だとし対策を講じませんでした。
このような前提があると、アメリカ出身のオリヴァーがなかなかエリオに気持ちを打ち明けられなかったのが理解できます。

上記をすべて理解したうえでもう一度作品を観てやっとすべてが繋がりました。作品としても楽しめましたし、かなり賢くなった気がします。こういった学びがあるというのも映画鑑賞の大きな特徴ですね!大馬鹿インド映画「Rowdy Rathore」とは大違いですw(あれはあれで好きですが)

シーンで言うと、やはり最後のエリオと父親の会話はグッときました。この作品の大きなポイントは、両親が息子の同性愛を許容しているという点です。さすが学のある人間は視野が広いと思っていましたが、それだけではなかったのです。そして父親が美しい言葉を紡ぎながら暗に打ち明けていく姿は本当に芸術的でした。一度もハッキリとは言っていないのですがすべてが伝わってくるし、エリオに対するメッセージも重みがありました。

あとオープニングとエンディングの演出がとてもオシャレ。舞台である北イタリアの自然豊かな雰囲気と、登場人物のアカデミックなイメージがよく表現されていました。エンディングは時にビューティフル!!

「君の名前で僕を呼んで」は同性愛を取り扱ったイタリア映画。同性愛者の苦悩や心の機微がよく表されていました。あと作品を深堀することで、少し賢くなれた気がします。


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