Ehang騒動の振り返りと元ホルダーが今思うこと

ここ最近、Twitter界隈でとある銘柄を中心に様々な議論が起きています。

その銘柄とは中国の有人ドローンメーカー亿航智能(Ehang)です。

EHang(NASDAQ: EH) は世界をリードする自立型航空輸送機(AAV)技術のプラットフォーム企業です。私たちのミッションは安全で、自律的で、環境にやさしい空の移動を誰もが利用できるようにすることです。EHangは、さまざまな業界の顧客にAAV製品、航空輸送やロジスティクスを含む商用ソリューション、スマートシティ・マネジメント、空中メディアソリューションを提供しています。 EHangは、世界の都市空港交通業界における最先端のAAVテクノロジーと商用ソリューションの先駆者として、空の境界を探求し続け、飛行技術をスマートシティでの生活に役立てます。 (Ehang HPより引用。筆者和訳。)

Ehangの詳細については、以下のマキノブさんの記事をご参照ください。

恐らくツイッターで中国株の情報を集めている人なら、その名前を一度は見たことがあるかもしれません。何なら株式を保有している、もしくは保有していたという人も多いのではないでしょうか。

私もかつてホルダーの一人でした。マキノブさんの記事は勿論、IR情報、各種報道、Youtubeの広報動画等を通して情報を集め、その魅力と将来性に惹かれ、一時期はPFの中でもそれなりのポジションを占めていました。

TwitterではEhangに関するニュースも多く呟いていましたし、そのおかげで多くの方々ともつながることが出来ました。ショートレポート発行後もずっと保有してきて思い入れがあることは自負していますが、色々思うところがあり決算前に手放してしまいました。

この記事ではWolfpack Researchによるショートレポート発行から、Ehangの反論と対応、そして決算までの経緯を触れていき、最後に元ホルダーとしての一考察を述べたいと思います。

(2021/05/03 追記)
UAV業界の概要やEhangの保有技術等について語られていないという意見を頂きましたが、当記事では上記の内容にフォーカスしております。それらの情報をお求めの方はマキノブさんの記事をご参照ください。


1.Ehangの株価推移

Ehangは2019年12月13日にNASDAQへ上場しました。発行時の価格は$12.5で、発行株式数は320万株だったそうです。

当初株価は低調で昨年7月には$7.59の最安値を付けました。

その後右肩上がりに株価は上昇していき、2020年1月上旬以降に暴騰。最高値は2021年2月12日の$129.33で、最安値の17倍という成長を遂げました。

この頃は、純粋にこの会社の技術と将来性を信じる人やこの高騰にイナゴをしようとする人たちが購入し、誰もが何の疑いもなくEhangのことを捉えていました。

ところが、2021年2月16日にWolfpack Researchによってショートレポートが発行され株価は急落。その日の引けには$45を付けました。

ショートレポートが発行されたのは日本時間の深夜であり、逆指値を設定していなかった多くの株主たちが被害に合いました。

以後、急騰と急落を繰り返し、現在の株価である$27.74まで下がってきています。

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2021年4月23日までの6ヶ月間日足チャート

2021年2月16日のギロチンのような暴落の後、まるでボールがバウンドするように株価は落ちていきました。チャート的には三角持ち合いで$30をボーダーに保っていたのですが、4月12日以降そのボーダーも割り込みました。底が見えない落ち方をする可能性もありましたが、4月19日-23日の週で$24当たりを底値に反発しています。

ショートレポート発行以外にも株価にマイナスとなる要因は多くありました。米国10年債利回りの上昇ウイグル問題にかかる中国への制裁米国の外国上場企業に対する会計監査状況検査の義務化といった、中国株にとって大きく不利な状況が立て続けに発生し、株価下落に拍車をかけています。

この暴落後、こんなツイートも。。。


2.Wolfpack Researchによるショートレポート発行

前述の通り、Ehangの株価暴落の引き金になったのはWolfpack Researchによるショートレポートの発行でした。

【ショートレポート要約】
①上海鹍翔(Shanghai Kunxiang)との架空取引
・Kunxiangの3つのオフィスの内1つは実在せず、もう1つは社員が1人いるのみ。
・Kunxiangは自動車の販売をしているがEH216を納入、販売していない。
・KunxiangはEhangに対してIPO前に非公開で$14Mの投資を実施
・KunxiangはEhangと$65Mの売買契約を締結した9日前に設立。当初の資本金は$1.4Mであり売買契約を満たすには資本が足りない。この他、4か月後には他の$4.3Mの売買契約を締結。
・2019年2月にKunxiangと締結した売買契約の単価が$21.5Mと高額だったが第2版では$215Kまで減額。SECに対しては契約書を秘密裏に修正を依頼。
・売掛金の回収率が20%、回収期間が200日程度と不自然なほど長期であり、虚偽の売上を示す指標とも取れる。
②飛行許可に関するリリースの虚偽
・米国、カナダ、EUで取得した飛行許可は特定の高度、期間、場所でのレクレーション的な試験飛行を許可するものであり、乗客用ドローンの飛行許可や法的なブレイクスルーはなかった。
・中国語のリリースでは「特定クラスのドローン試運転のための特別承認書 (“特定类无人机试运行批准函”)」と記載されている一方、英文では「世界初の航空ロジスティクス向け乗客用・商用航空運転の運用承認」と記載。
・この他にも英文と中国語でそれぞれ異なったプレスリリースを多数出していた。
③空の工場
・平日にEhangの本社と工場に訪問したところ、僅か数名の社員が活動しているだけで実質的に空であった。
④モーターの安全性
・EH216に利用されているモーターはT-Motor社の玩具用のもの。
・同モーターは人の輸送に使われるものではない。
⑤資産の凍結
・Ehang Guangzhouの債券を保有する深圳のファンドにより取消権が行使され、中国の裁判所により資産の95%が凍結されている。

改めて読み返してみると、中々ヤバい内容ですね。。。

特に売掛金の箇所については当時ケイさんも指摘しており、架空売上の疑惑が出てもおかしくないと解説しています。


このレポートを受けてEhangの株価の下落が始まりましたが、一方でWolfpackのショートレポートの信用度は低いという噂も出回りました。

その一つは「これまでWolfpackが出した6つのショートレポートの内、5つはレポート発行前の価格を上回っている」というものです。

これについては私がそれぞれの銘柄の株価推移を下記ツイートにて実際に確かめています。

■結論
Redditの記事の通り、Wolfpackが出した6つのショートレポートの内5つは株価がショートレポート前の価格より高くなってる。
■考察
・上記の結論はWolfのレポートの正確性を表すものではない。
・ $GTT $QTT $SGH $MARK はレポート発行前の株価より低い株価で推移している時期がある。
・以前のものと比較しても $EH の下落率は非常に高く見える。

ちなみにWolfpack Researchのアナリストは歯並びが良いイケメン。



3.ショートレポートに対するEhangの反論

これに対してEhangも黙ってはいませんでした。Ehangはショートレポートが出た翌日から4日連続でIRを発表していきます。

2月17日、まずはCEOのインタビューがIRに掲載されました。

この記事では、Ehangの製品や技術に対する思い入れから始まり、以下の通りショートレポートの内容を否定しました。

【CEOが主張した内容】
・モーターは専有的に設計したものを利用していること
・各国で許可を得た上で試験飛行を実施してきたこととその実績
・Kunxiangとの取引関係が適切なものであること
・AAVの製造拠点は実在し、雲浮市に工場を建設中であること
・不法侵入している人物を監視カメラで捉えていること
・資産の凍結はされておらず、Wolfの出した証拠はIPO前の債権者間での仲裁手続きに関するものであること

ただ、この段階では声明文だけであり証拠はなかった他、売掛金、ニュースリリースの虚偽については触れられていませんでした。


2月18日、今度は雲浮市の新工場の写真を挙げ、6月後半に現地で投資家向けイベントを開催することを発表しました。


2月19日、EhangはKunxiangとの関係に関して更なる反論を掲載しました。

2月22日、今度はKunxiangと締結していた契約書の原本と英訳、および納入品の詳細を公表しました。

上記のIRを最後に、Ehangによるショートレポートへの反論は終わりました。

上記ツイートの懸念点の他、モーターについてはエビデンスを出しておりませんし、英語と中国語のリリースの内容に差異があったことはノータッチのままとなっています。加えて、粉飾の可能性も考えられる売掛金の膨らみについても説明していません。いずれも事実だとしたら非常に致命的なものばかりです。

これ故、Ehangの反論は不十分であると考える人たちも多く居ます


4.IRリリースラッシュと決算発表の遅れ

ショートレポートの反論が終わった後、Ehangによる怒涛のリリースラッシュが始まります。

【2021/2/24 北京での試験飛行成功】 ※IRページは削除済。

【2021/2/26 南シナ海の横断成功】

【2021/2/26 中国国家交通網計画ガイドラインへの支援宣言】

【2021/3/16 イタリアの建築企業Giancarlo Zema Design Groupと提携】

いずれも株価が好転する程の材料にはなりませんでしたが、株主にとって非常に心強いニュースでした。

一方、米国ではEhangに対する訴訟が頻発していました。


また、日本のメディアでもEhangの株価暴落は報道されています。この記事では岡山に納入されたEH216は未だ飛行実績がないことを明らかにしています。

(2021/06/05 追記)
上記のEH216は長らく飛行実績がない状況でしたが、先般試験飛行が実施されました。試験飛行には、加藤内閣官房長官の部下の方や倉敷市長等の重役の方々も立ち会っていた模様です。このニュースに伴い、株価が急騰しています。


そんな状況の中、3月8日には中国のニュースサイトでEhangが航続距離400kmの有人ドローンを販売予定であることが報道されました。

EhangのTwitterアカウントもこれに反応。数か月のうちに新製品のテストフライトを行うことを表明しました。

これで株価は一時反発し、$50近辺まで回復しました。このとき、ようやく下落から横ばいもしくは上昇へ転じたと多くのホルダーが感じたと思います。

ただ、この報道についてEhang側は決算まで正式なコメントを出しておらず、個人的には何故IRで発信しないのか疑問に思っていました。

また、色よい非公式のニュースが出てくる一方、この頃から2020年度4Qの決算発表の遅れが心配されるようになりました。

2019年度のものは2020年3月24日に発表され、正式な報告書であるForm-20は同年4月20日にSECに提出されていました。しかし、今年は3月24日を過ぎても決算発表予定日すらリリースされていませんでした。

そんな中、2021年3月31日に決算予定日が告知されました。

Form-20の締切は2021年4月30日であり、決算発表の段階では未監査で問題はありません。

ですが、昨年は決算発表から提出までに4週間近く要していたにも関わらず、今年は期限2週間前で未監査の状態であるという点に危うさを感じざるを得ません。


5.待ちに待った2020年度決算発表

2020年4月16日、予定通り決算が発表されました。

【決算発表内容】
■2020年4Q
・売上:S$8.4M(-0.2%)
・純損失:$7.8M(-3,800%)
・LPS:$0.07
・販売台数:22台(-15.4%)
■2020年通年
・売上:$27.6M(+47.8%)
・純損失:$14.1M(-91.8%)
・LPS:$0.12
・販売台数:70台(+14.8%)

【売上目標】
CEOのコメントの最後には、広東・香港・マカオのベイエリアで実施予定の「100 Air Mobility Routes Initiative」への参画について言及。このイニシアティブでの販売も含めて今年のEH216の販売目標は約250台とのこと。

【その他】
中国民用航空管理局(CAAC)とEH216の型式証明チームを設立したことを発表。
https://ir.ehang.com/news-releases/news-release-details/caac-established-eh216-type-certification-team-further-advance

年度単位の成績では、売上が拡大している一方それ以上に赤字が大きくなっています

赤字拡大の大きな要因は新型AAVの開発に係る費用です。QoQで229.4%, YoYで84.1%も膨れ上がっています。

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2020年度4Qの営業費用の説明

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2020年度通年の研究開発費の説明

必要なのは分かりますが、売上の伸び以上に研究開発、設備投資に費用を投じるのは個人的に余りよろしく感じません。しかも、営業費用の多くを従業員の給与を株式で賄っています(share based compensation:株式報酬費用)。

企業が株式報酬を利用するメリットの一つとしてnon-GAAPの利益を算出する際にこの費用を除外することが出来ることが挙げられます。なので、決算報告時の利益の値を盛ることが出来ます。そのため、事業活動の費用をこれに頼り過ぎるのは好ましくないと私は考えています。

Ehangの場合、4Qでは販売費の40.6%、一般管理費の30.4%、研究開発費の48.5%がこの株式報酬費用で賄われています。この割合を見る限り、相当な費用が株式で賄われていることがわかると思います。

加えて資金繰りが悪化しています。手持ちの現金が前年の半分程度まで減少しています。CFを見る限り、設備投資費用と短期投資目的有価証券の購入費用の増加が原因のようです。

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Ehangの投資キャッシュフロー

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Ehangの要約版連結キャッシュフロー

一方、売掛金は何倍も増加し総資産額は微増。売上を計上しても現金が手元に入ってこない状況に見えます。

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Ehangの貸借対照表の流動資産

この財務諸表についてケイさんもツイートしており、年間売上高(RMB180M)に相当する売掛金残高(RMB179M)が回収できていないことを言及していました。

一方、Earning Callの中で、3/31までに売掛金RMB179.4Mの内、RMB76.3Mは回収済みとのコメントがありました。

ケイさんは上記の通りキャッシュショート(資金切れ)を懸念していましたが、上記の情報を見て資金繰りは大丈夫そうとのコメントを出しています。

ちなみに、ここで言及している$40Mの私募はフランスのファンドCarmignacからのものと見られます。

しかし、Earning Call内で言及されていたのはあくまで2020年度中の売掛金なので2021年1Q分の売掛金はどうなっているのかはまだ分かりません。

このように売掛金は右肩上りなのに現金は増えていかない状況なのですが、これには中国の独特の商習慣や取引条件が関連しているとの見方もあります。

取引条件については2019年の年次報告書(20-F)で2つの大口顧客との取引に適用される与信期間(Credit Period)が180日である旨の記載があります。

売掛金1

【2019年度年次報告書(20-F)】

またその他の例としてKunxiangとの契約書を見ると、注文後3営業日以内に代金の30%(RMB 30Kを事前に支払済)を支払い、注文品の納入前に残りの代金に支払うことが規定されています。ちなみにこの取引では納入期間が1ヵ月に設定されています。

Ehang 支払い条件

Kunxiangとの契約に記載されていた支払い条件

【契約書(英訳版)】

https://ehang.gcs-web.com/static-files/32548715-6754-4ad6-9174-45c361ce9932

国内の下請法適用取引に関わる仕事をしている私からすると、これらは変則的かつ長期の支払条件に見えましたが、180日の支払条件は中国では一般的であるという意見もあります。

仮にEhangの取引で180日が標準になっているのであれば、確かに売掛金の回収が遅れていることも理解できなくはありません。一方で、Kunxiangの契約書の条件が適用されている場合であれば、支払期間は180日よりかなり短くなるように思えます。

それでも1年分もの売掛金を回収できていない理由はEhangが製品を納入していない顧客が支払を拒むor支払能力がない、もしくは上記のIRの情報も粉飾のための根回しで記載した等が考えられます。

いずれにせよ、株主が見られる情報から事実を確認することは難しいです。


6.Ehang騒動に関する考察

ここから先は私個人の意見を多分に含んだ考察になります。

偏見と推測が多分に含まれている部分もあるので予めご了承ください。


 ① Ehangの対応から垣間見える中国人の国民性

あくまで私の推測ですが、Ehang側はショートレポートに対する反論は全て終わったと認識しているのではないかと思います。

まずこういった一連の経緯を見る上で、国によって人、企業、政府が持つ考え方は全く異なるということを理解しておく必要があります。特に今回の場合は、面子を重んじる文化誇張表現の多用というのがポイントになると思います。


私の経験上、中国の団体、中国人は100%自分が悪いというケースを除いて絶対に非を認めません。加えて、自身に被害を与えたり面子を潰したりした相手に対しては自分のことを棚上げにしても責めまくる傾向があります。

何回かこういう場面に出くわしたことがありますが、筋が通っているとか関係無く、相手の言い分には耳も貸さないで、一方的に容赦なく自分の意見を主張します。特に面子を潰されたときの怒りは相当なものです。

今回のケースだと、Wolfが不法侵入をしてまでEhangの顔に泥を塗った形になっているため、Wolfの指摘が一部正しくとも絶対に自分の非は認めないと思います。

では、ここでいう自分の非、つまりEhangが名言を避けたいWolfの指摘は何かというと、これまでの対応を見る限りKunxiangとの契約書と売掛金だと私は推測します。

Wolfは「Shanghai Kunxiangとの契約書の英文表記と中国語原本の数値に乖離がありこれを基に粉飾をした」と指摘しましたが、Ehangの反論や実際の文章を見ると誤訳だったとも考えられます。

しかし、粉飾にせよ誤訳にせよEhang側に非があるのは確かです。加えて、契約書に記載している台数とEhangが主張する納入台数に差異がある点についても十分な説明は得られていません。

尚、中国のビジネスに精通されている方の話では「契約書は紙切れ」という意見もあります。

Kunxiangへの販売台数と契約書の台数が違うこともこれが理由なのだろうか。。。

私は仕事柄、英文契約書に携わることもあるのですが、上記は欧米や日本ではまずありえない考え方です。取引において契約書に書いてあることは絶対であり、不可抗力など守れないケースが想定されるなら相手方と膝を突き合わせて交渉し、締結前に契約書面へそれらを全て盛り込むことが鉄則です。そして万が一トラブルが起きたときは契約書の内容に従い紳士的に対応します。

売掛金についても明言を避けてるように見えます。前章に記載の通り現時点で見れる情報では断言が難しいですが、これまでの対応を見ても黒もしくはグレーなところがあったのではないかと思います。

その理由の一つとして決算の遅れが挙げられます。この遅れはForm-20の作成で不都合があったことが原因だと私は推測します。

決算は4/16に発表されたものの、F-20の締め切りが4/30と相当近いにも関わらず依然として未監査の状態です。顧客との力関係により売掛金が回収しにくい可能性があることは各種資料から推察できますが、これまでのリリース内容では粉飾の疑惑を解消することが出来ません。この点について現在も監査法人と揉めているのではないかと私は考えています。


また、中国人の表現は基本的に盛られているということも理解しておく必要があります。

過去に、中国人留学生が作ったレポートや、中国本土にある共産党の資料館にある文献などを読んできましたが、私の知る限り、良く言えば雄弁で自信に満ち溢れた表現、悪く言えば曖昧で誇張された表現が多いです。

文章に限らず、現地の人たちとの会話でも「この人すごく過剰な言い方するな」「こいつ見栄っ張りなことしか言ってないな」と思うことは多々あります。当記事で紹介したEH 216の南シナ海横断のニュースを見て、大げさに表現していると感じた方もいるのではないでしょうか。

今回、ショートレポートでは英文と中国語でリリース内容が異なっていた点やリリース自体を偽装していたと報告されていましたが、これは欧米諸国の人々が中国流の表現を理解せずに文字通りに受け取ったことが原因なのではないかと私は思います。

ショートレポートで「法的なブレイクスルーではない」と言っていても、Ehangから主観的に見たら自分たちが行ってきたことは「法的なブレイクスルー」であり誤りではありません。

そのため、反論一発目のIRでCEOは誤った表記を認めるのではなく実績を多数披露して法的にも認められてかつ先進的なことを実施している点をアピールしたのではないかと推測します。


以上より、Ehangは今後もショートレポートについては解決済みで自分たちは全く悪くないというスタンスを貫くと思います。

日本人からしたら素直に自分の非を認めれば良いだけの話に見えますが、Ehangは絶対に認めないでしょう。何故なら、それを認めた瞬間Ehangにとっては敗北が確定するからです。

好き勝手に書きましたが、何人かの人は「Ehangはこんなに頑張っているのに!」「差別的なことばかり言ってひどい!」「良心はないのか!」とか思う人もいるかもしれません。

ですが、これだけは知っておいてください。他の国でも同じ事を言えますが、日本人の常識は中国人にとって非常識であり、そしてその逆も然り、なんです。


 ② 決算の内容から読み取れる財務面の不安定さ

正直なところ、この決算内容であればEhangの株価が伸びていたとしても一旦売却していたでしょう。何故なら社内で財務的な統制が取れておらず、株主の資金を有効に使えていないように見えるからです。

Qの売上減少はコロナの再拡大が原因というのは分かりますが、それ以上に費用を使いすぎて、かつ従業員への報酬を一部株式で賄っているのは余り良い印象は持てません。

売上が伸びず資金繰りが怪しくなることはある程度予測出来るでしょうし、財務面での社内統制を効かせて節約することも出来たはずです。

まだ若い企業で開発に費用をさく必要があるのはわかります。赤字にしてなんぼという考えもあるかと思いますが、限られた費用と時間の中で開発を進めることも一つの技術であると私は思います。ましてや増資で得られた資金であれば尚更です。

これまでいくつかの企業の財務諸表を見てきましたが、

累積赤字が純資産の額と比較して桁違いに大きく、しかも増加傾向

・信用がないため銀行から長期借入が出来ず、株式の発行だけに資金調達を頼ってる

・技術と製品の広報にばかり力を入れている

という企業がいくつもありました。これらの銘柄は長期のチャートを見ると最高値がはるか昔でずっと株価が低迷しているものばかりです。

非常に辛いですが、決算書を見る限りEhangもそのような道を辿る恐れがあると思ってしまいました。


 ③ 保有銘柄のショートレポートが発行された時の適切な対処

今回の件で得た大きな学びの一つです。

ショートレポートが発行されたときは「発行後、24時間程度様子を見てから全て売却すること」が最善だと考えます。

発行直後は一時的に大幅な下落を伴うのですが、底をついた後に大きく跳ねることがあります。所謂、Dead Cat Bounceというものです。

今回もEhangの株価は一日で$45まで落ちたあと、次の日に$77まで回復をしました。このような跳ね返る現象はEhangだけでなく、Lordstown Motorsでも見れました。

ただ、大体の場合、ショートレポートがヒットした銘柄は回復するどころか最安値を更新し続けているので、欲張らずにすぐ売却でも良いかもしれません

いずれにせよ、自分の資産を守るにはショートレポート発行後は該当銘柄を保有しないことが最善策と思います。


7.「嘘を嘘であると見抜ける人でないと(Twitterを使うのは)難しい」

最後に、自分への戒めとしてこの一文と記事を書きたいと思います。

ご存じの人も多いかと思いますが、これは2000年に起きたバスジャック事件についてひろゆきこと西村博之さんが述べた言葉をまねたものです。

私はTwitterを始めて3か月程度になります。これまでの間、Twitterで流れてくる情報の多さとその真偽に戸惑うことが多くありました。

Ehangについては、決算が近づくにつれて出元も真偽も不明な情報が多く流れてくるようになり、その情報を素直に信じてしまうEHホルダーの方々が多く居ました

私自身もその一人で、3月25日に出た韓国での受注に関するニュースについてもソース不明なままツイートをしてしまいました。

後日、他の方から指摘があり、このニュースは公式で発表がされていないものであり、記事の作者も身元がわからない個人の方だとわかりました。

このとき私は真偽不明な情報をつかんで、しかもそれを真実だと信じてしまっていたのです。


Ehangはショートレポート発行後、不自然なほどポジティブなソース不明の情報と意見だけが出回り、かつての株価を夢見てこれらを信じ株を握り続けていた人も多いと思います。

・個人の知り合いから聞いた
・私がこう思うから正しい
・中国のユーチューバーが言っていた etc...。

上のようなツイートを見た方も多いのではないでしょうか。

その情報の発信元はどこなのか、どのような目的を持っているのか、全く判断が付きませんが、これだけは言えます。

信頼できる情報は各主体の広報や大手報道機関のニュースしかありません。

株価の下落が後押しした形にはなりましたが、私がEhangを決算を待たずに手放してしまった理由の一つはこれです。

本当なら売却したくありませんでした。過去に下記の様なツイートをした以上やりきるつもりではいましたが、ソース不明な情報により株価が不安定になっていると判断し、最後は自分の資産を守ることにしました。

今見返すと結構恥ずかしいこと言ってますね笑。奇しくもこの日は私の誕生日でした。

今回の件で給与●か月分の損失を代償として過信して握り続けるのは良くないことを身をもって知りました。

もうEhangの株主ではなくなりましたが、Note作成にあたり改めてここの企業の情報を見返してみると良い点を多いことに気が付きました。

UAM業界はEhang以外にもJoby AviationやLiliumといったライバルも存在し、これらの企業も今後IPOが予定されています。

これからの競争激化は必須でしょうし、それに伴ってこの業界がどう発展していくのかは非常に興味があります。

元ホルダーとして、Ehangにはいつか皆が保有したくなるような魅力ある銘柄に戻ってくれることを期待しています。


以上




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