2022年度大阪府教員採用試験の数学の問題

2022年度の大阪府教員採用試験で次のような問題が出されていました。

$${f(x)=\displaystyle \frac{2\sin x + 2}{\cos x + 3}}$$の最大値を求めよ。

分数関数というのが面白そうだったので解いてみました。

いわゆる逆像法というのを使います。
具体的には、実数$${k}$$に対して、

$$
f^{-1}(\{k\})=\{ x\in \mathbb{R}  |  f(x)=k \}
$$

が空集合とならないような$${k}$$の上限$${K}$$を求めます。つまり、

$$
K=\sup \{ k\in \mathbb{R}  |  f^{-1}(\{k\})\neq \emptyset \}
$$

を求めます。
ここで、一般的には、$${K=\infty}$$となってしまう心配がありますが

$$
|f(x)|\leq \frac{2\times 1 + 2}{-1 + 3}=\frac{4}{2}=2
$$

より、$${K<\infty}$$であることが分かります。

さて、$${f(x)=k}$$とすると、

$$
2\sin x - k\cos x = 3k - 2
$$

となりますが、左辺において三角関数の合成を考えると

$$
\sqrt{k^2+4}\sin (x + \theta ) = 3k - 2
$$

となります。ここで、$${\theta}$$は

$$
\sin \theta = \frac{-k}{\sqrt{k^2 +4}}, \, \, \cos \theta = \frac{2}{\sqrt{k^2 + 4}}
$$

を満たす実数です。このとき、

$$
\sin (x + \theta ) = \frac{3k - 2}{\sqrt{k^2+4}}
$$

なので、

$$
\begin{align*}
f^{-1}(\{k\})&=\left \{ x\in \mathbb{R}  |  \sin (x + \theta ) = \frac{3k - 2}{\sqrt{k^2+4}} \right\}\\
&=
\{ x\in \mathbb{R}  |  \sin (x + \theta ) \} \bigcap \left\{ \frac{3k - 2}{\sqrt{k^2+4}} \right\}\\
&=[-1, 1] \bigcap \left\{ \frac{3k - 2}{\sqrt{k^2+4}} \right\}\\
\end{align*}
$$

が得られます。

したがって、$${f^{-1}(\{k\})\neq \emptyset}$$となるのは、

$$
\frac{|3k - 2|}{\sqrt{k^2+4}}\leq 1
$$

を満たす場合であることが分かります。この不等式を解くと

$$
0 \leq k \leq \frac{3}{2}
$$

となるので、$${K=3/2}$$であることが分かります。

次に、$${f(x)=3/2}$$を満たす$${x}$$を求めましょう。このとき、

$$
\sin (x + \theta ) =1
$$

となることから、

$$
x = -\theta + \frac{4n+1}{2}\pi=- \arcsin \left ( -\frac{3}{5} \right )+ \frac{4n+1}{2}\pi=\arcsin  \frac{3}{5}+ \frac{4n+1}{2}\pi
$$

となります。ここで、$${n}$$は整数です。

これで問題が解けました。まとめると次のようになります。

$${x= \arcsin  \frac{3}{5}  + \frac{4n+1}{2}\pi}$$のとき最大値$${\frac{3}{2}}$$

実は、採用試験の問題には、もう少し条件が付いていて、ここまで議論しなくても解けるようになっています。具体的には、関数の定義域が有界閉区間(つまりコンパクト集合)になっていて最大値が存在することが保証されています。さらに、最大値を実現する$${x}$$は求める必要がありません。

今回は数学の議論を色濃くするように記事を書きましたが、実際の採用試験では、もっと雑な議論でも正解にたどりつくことができると思います。


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