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3観点評価と成績の分散

高校でも3観点評価が始まっています。

私も昨年度にはじめて3観点評価で成績をつけました。

3観点での成績をつける中で気付いたのは、成績が極端に良い生徒の数と極端に悪い生徒の数が減って、平均点の近くにいる生徒の数が増えたことです。

これは、どうしてでしょう?

もちろん、昨年度の生徒の成績がたまたまそうなったということもできますが、数学的に考察するのも何かの価値があるだろうと思い、本稿を書いています。

3観点評価以前の成績の付け方を確認しましょう。
定期考査の点数から算出される成績を$${X_1}$$とし、いわゆる平常点から算出される成績を$${X_2}$$とするとき、全体成績$${X}$$は

$$
X=\frac{8X_1+2X_2}{10}
$$

で計算されます。この計算では考査点と平常点の比率を8:2としています。これは一般的な比率と思われます。

$${X_1, X_2}$$が独立であると仮定し、$${X, X_1, X_2}$$の分散をそれぞれ$${V(X), V(X_1), V(X_2)}$$と表すことにすれば、次の等式が成り立ちます:

$$
V(X)=\left( \frac{8}{10}\right)^2V(X_1)+\left(\frac{2}{10}\right)^2V(X_2)=\frac{16}{25}V(X_1)+\frac{4}{25}V(X_2)
$$

さらに、$${M=\max\{ V(X_1), V(X_2)\}}$$とすると、

$$
V(X) \leqq \left( \frac{16}{25}+\frac{4}{25} \right)M=\frac{4}{5}M
$$

が成り立ちます。

一方で、3観点評価での成績の付け方を確認しましょう。知識・技能に関する成績を$${Y_1}$$とし、思考・判断・表現に関する成績を$${Y_2}$$とし、主体的に学習に向かう態度に関する成績を$${Y_3}$$として、全体的な成績を$${Y}$$とすると、次の式が成り立ちます:

$$
Y=\frac{Y_1+Y_2+Y_3}{3}
$$

$${Y_1, Y_2, Y_3}$$が独立であるとし、$${M'=\max\{V(Y_1), V(Y_2),V(Y_3) \}}$$とすれば、$${X}$$の場合と同様にして、次の不等式が成り立ちことがわかります:

$$
V(Y)\leqq \frac{1}{3}M'
$$

さて、ここから大胆な決め打ちをします。
まだ、教員が3観点評価になれていなかったりして、$${M=M'}$$が成り立つと仮定しましょう。このとき、次の不等式が成り立ちます:

$$
V(Y)\leqq \frac{1}{3}M
$$

このことから、$${V(X)}$$よりも$${V(Y)}$$の方が小さいだろうと予想されます。

このことは要するに、3観点評価の成績$${Y}$$の方が全体的に平均点付近の成績をとった生徒が多いだろうということになります。

これが冒頭に書いたような疑問に対する、私の回答です。

しかし、何らかの理由で$${M=M'}$$が成り立たないようになると、上記の考察は成り立たなくなるでしょう。

これを見た賢い人が、もっと強力な議論を発見してくれることを祈ります。

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