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イカ室たぎった ①

「趣味は海釣りの旦那が釣った魚をそのまんま奥さんに渡してさばかせているのってどう思う? 」
「あたしならスーパーで切身買う方が絶対楽だわ」
「でも魚を釣れる旦那が料理もできたら奥さんなんて要らないんじゃない?」
そんな雑談をしながらあたしたちは船底の『イカ室』で次々と運ばれてくるイカの皮を剥ぎ取りワタを抜く作業に余念がなかった。ここの雇い主たちもおそらく釣りが趣味で自分でさばくのは面倒くさい人たちなんだろうな。そりゃバイト代がもらえるんだからやるわよ。
「痛っ」
釣り針だか骨だかが指に刺さった。
「労災おりるんですか」
するとバイトリーダーは
「そんな訳ないだろ」
と軽く答えた。嘘⁉︎ 何よそれ。あたしたちは感情を滾らせた。労働者なめんなよ。
「しいっ」
リーダーは人差し指を立てる。
「このイカ工船ではヨソの国の密漁品を扱っているんだ。ここEEZ外だし」
まじか。
そのとき、海底から「巨大なイカ型の何か」が見つかったと、 

!!!

405文字

たらはかに様のお題に参加しています。なお本作は某著名文学者のデビュー作から想を得た部分があります。まだお読みでない方へ、あくまでも個人的には閲覧注意かも。(最近逝去された国際的な賞の受賞者です)

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