肝試し美人化　振袖編

　久しぶりの同窓会の後のこと。
「さあ、みんなー肝試しやるよー」
と運田（はこびだ）さんの声がかかりましたので、あらこんなシーズンに？と不審に思ってついて行きました。なんとそこは和装着付け教室ではありませんか。騙されました。高額な振袖を次から次へと楽しそうに試着する元同級生ら。肝試しならぬ着物試しでした。メイクさんが現れて素顔を完膚無きまでに塗りかえ目の醒めるような美人へと変えていきます。
「成人式だけではありませんよ、お友達のお式やらご自身のお色直しでお召しになる方もいます」
巧みにセールストークを展開しつつ分割払い契約の書類にサインを迫ります。

そのときさっと朝日が差し込みました。
「あーキモい」
「もうダメー」
「しぬー」
時間切れです。人間の振りつまり擬人化していたあたしたちは生前散々クラスメイトから搾取してきた彼女の実家の呉服屋を袖にして元の妖怪に戻りました。
「帰りにイタ飯食べてく？」
「それを言うなら無駄メシね」

408文字

たらはかに様の裏お題に参加しています。