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「感想文部」内紛初期編

「えっ、入部希望者?」
見れば女子だ。スカート丈は校則通り、分厚いレンズの向こうの瞳は意外と愛くるしい。胸もまあありそうだな、すると相手は視線を遮るように赤毛のアンを両手で抱え直す。そこに女子部のキャプテン真佐子が出てきた。
「あなたねえ、まさかココが読書して感想文を書くトコだとでも? あたしたちの正体は些細なことで活動停止処分をくらった陸上部員よ。看板を変えて地下活動してるの。グラウンド走ってても『走れメロス』の実証実験だと言い逃れできるでしょ。カメに用はないわ。もしかして男子部員狙い?」
すると彼女は顔を赤らめ、
「そ、そんなこと、」と口ごもる。
「まあ待て、」とオレ吉村が口をはさみ、
「でも、もしそうだったらどうだと言うの?」彼女が言い返したのと、
「メロスにも少し飽きた。たまにはアキレスも悪くない」
と続けたのはほぼ同時だった。

 そんなふうに始まったと記憶する。真佐子とカメのキャプテンをめぐる泥沼バトルは。

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