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神様時計 ⑤

「ママ、ポチどこ」
さあどこかしら。お散歩かな。お昼寝かな。
少しのあいだだけ預かるはずたった。隣家の異国人の夫婦は保育時間中に愛犬とともに帰国してしまった。とても愛らしい子犬で遊びに行き「この子のお姉ちゃんになってやってね」とおだてられた娘はすっかりその気になっていたのだ。
「知ってるもん。神様のところにいるんでしょ」何をいうのこの子は。どうやらあちらの奥さまが今度お姉ちゃんに会えるのは神様のところかもしれないわねなんて言ったらしいの、このご時世とはいえ縁起でもないわ。するとスマホを見ていた夫はいやあながち間違いじゃないかも知れないとつぶやいた。そして娘に向き直ると
「このあいだうちに来たとき座布団を毛だらけにしていたよね」と話しかけた。彼の友人が家畜のクローンの研究をしているのだ。
「ボロージャ・ポチッチの小屋を用意しよう。夏にできるかな、'coming summer dog' だ」
ついに神様時計計画が動き始めた。

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