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「ぴえん充電」②

「痛っ! 」
 発明家の妻の私が掃除中にコードに足を引っかけ蹴つまずくなんて。こういうとき何て言うんだっけ、ぴえ?じゃなくて、えーと。いい加減充電式にしないクリーナー? うちだけだよコードリール式なんて。世間はロボット任せなのに、紺屋の白袴じゃない。せめてスティックタイプにしようよ。

 重い腰を上げてやっとうちも充電式のクリーナーを導入した。ただし夫の作品だが。
「ねえ何でなの、充電が完了すると『ぴえん🥺』と鳴るじゃないの。他に言いようがあるでしょ? 『満タンです』とか」
「あ、しまった、イタリア語モードになってた。満タン=pien(伊語)だよ。いま日本語モードに変えるよ」
「ちょっと待って、この声なんだか聞き覚えがあるわ。ぴえんぴえんぴえん。ビワを爪弾くような悲しげなメロディ」
「よくわかったね。付き合いはじめたころサラリーマンだったボクが転勤で地方に行くと言ったらキミが言ったんだ『ぴえん🥺』と。そのときの音声だよ」

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