「不思議ドライバー」⑤
その昔『不思議ドライバー』という都市伝説があったのさ。そのドライバーのタクシーは絶対に信号に引っかからない。そして窓の外は実に美しい景色が流れてゆく。おしまいに目的地に到着すると、黙ってドアか開く。「おいくら?」などと聞いてはいけない。タダなのだ。そういう車に当たったことはなかったけどね。ジイちゃんが遠い目で語る。
ボクは「ふーん」と聞いているがどうしてもわからないことがあった。タクシーって何? 信号って何? 「おいくら?」ってどういこと?
そうだよなあ、お前は被侵略、植民地化以後に生まれたからなあ。今のボクらの移動手段はひと昔前には未確認飛行物体などと呼ばれていたらしい。集団で移住してくる前にチラホラ姿を見せていたということか、パパの先祖は。今や地上を走行する人なんていないし、貨幣でのやり取りも消滅しているもんな。
その時、丸い足をクルクルと回転させながら蟻のように這っていく物体が見えた。何て不思議!
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