誘惑銀杏（上）お銀

　風に乗って隣家の落ち葉が我が家の敷地にも飛んできます。鮮やかな黄色に目を奪われていると
「どうしてうちの木は実がならないのかしら」とお隣のお杏さんがつぶやいたので
「公園の木はどう？」と答えました。買い物帰りに公園で屈んでいる姿を見かけました。まるでミレーの名画のようです。しばらくしてお杏さんのお宅から癖のある香りがしたように思えたのでたずねたら、慌てた様子で
「何でもないの」と何かを隠しました。
　銀杏の殻をきれいに剥くには道具が必要です。割り箸とハンマーでもいいし、合羽橋まで行かなくても均一のお店にもあるのです。母はペンチを握るタイプを使っていました。実家を片付けたときに持って帰っておきました。少しずつ割るのよ食べ過ぎないようにねとか言っていたはず。これ安かったから買ってしまったの。良かったらいかが。業務用の実も差し上げますね。

　木だけが残ったけれど新しい地主さんは切り倒すでしょうね。これで秋が淋しくなります。

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　食べ過ぎると中毒を起こすといわれています。というか、そう信じられているようです。
さっき段ボールが届きました。ざらざら。

たらはかに様のお題に参加しています（後半に続く）