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「みんなで動かない」④

 むかし、王さまのお墓を建てることになりました。奴隷たちは石を運ばなくてはなりません。石と言ってもポケットにおさまる小石なんかじゃなく何人もで引きずって動かす大きなものです。「冗談じゃない」
奴隷たちはみんなで動きません。
「おい、お前たち何でやらないのだ」
「重いからいやです」
そこで王さまは
「そうか? でも重いのはお前たちのほうだぞ。運動不足で体重が増加している。少しは体を動かせ」と言いくるめました。だまされて石を動かす者もいます。
「おれ、いつ休めるんだ」
ある風流な奴隷が
『月ゆけば六分の一重力かな』という句を石に刻みました。それを見てまたみんな動かなくなりました。無理して痩せなくても月に行けば良いのです。王さまも月ならお墓が簡単に建てられるような気がしてきました。
『それならば月に行くまでだみんなで』
刻まれた二つの句の『みんなで』と『重力かな』と俳人「いつ休めるんだ」の署名『』はその後長く残っていたそうです。

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