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「しゃべる画像」絵本編

 子供の頃大好きだった絵本があります。詳しい内容は忘れましたが確か動物園が舞台でした。いつも寝るまえに絵本をつかんで母に「読んで読んで」とねだるのです。母はのろのろと読み聞かせを始めますが、やがて目をこすりながら「今日はもう寝るからここまでね」と本を閉じてしまうのです。後で知ったのですが母は涙がこみあげて続きが読めなかったのです。いつのまにかその本は行方不明になり私はその物語を忘れました。
 あれから何十年も経ちました。私はすっかり歳をとり娘の孫の子守りをしています。
「ばあば、ママが今夜から地下室で寝なさいだって」
下に降りるとすでに部屋がしつらえてあります。片隅に『かわいそうなぞう』の絵本がありました。なつかしい。思わず手にとります。すると絵本の画像みずからしゃべりはじめたのです。可哀想な物語でした。
「ひどい。戦争許せない」
私は濡れた頬で叫びました。するとひ孫が言いました。
「しいっ、敵に居場所がわかっちゃうよ」

410文字

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