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惰性のエッヘン開放 

 社会科教師生活25年。私はなぜか世界史で19世紀あたりに近づくと緊張感のあまり呼吸困難に陥る。

 あれは女子高て初めて教壇に立ったときのことだ。まだ若く多少はイケメンだった私が
「そしてアメリカは中国の門戸開放・機会均等を、」
と説明した。するとなぜか女生徒たちがきゃーっと騒ぎ出して収拾がつかなくなったのだ。
「要するにスネ夫と静香と出来杉がのび太をいじめているところにジャイアンが来てオレも仲間に入れろと言ったのです、それがあたかも正当で真っ当な要求であるかのように、」
必死で言葉をつなげたが教室は静まらない。
私は何を言ってしまったのだろうか? 

 だが最近の生徒らはまったく無反応だ。居眠りする者、内職する者、完璧に理解している者、忖度して黙って苦笑いする者。なのに私だけが発作を堪えるようにエッヘンエッヘンと咳払いが止まらない。もはや惰性であるこのエッヘン開放は。

(片隅で落第を続ける一人のおかっぱ女子だけがクククと⁉️)

410文字

たらはかに様の裏お題に参加しています。

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