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「結婚式ゾンビ」④

「やっぱりこれでよかったよ。最初は気がすすまなかったけど」
 滞りなく進行する式の最中に彼は私にそう言った。ここは本物の教会で周りは墓地になっている。
「今だから言うけど、3年前に僕はこの教会で挙式した、いやするはずだったんだ。でも、誓いのキスの直前に突然男が割り込んできて花嫁をさらって逃げたんだよ。その二人にとってはドラマチックな痴話喧嘩かも知れないけど当て馬にされた僕はいい面の皮さ」
そんな。ではあなたはあのときの? 実をいうと私はその割り込み男の元カノとして彼らの新生活に散々嫌がらせをして警察のご厄介になった挙句に身内から縁を切られ職場もクビになって友達からも見放された女だった。だから今日の招待客も全部サクラバイト。
「私は気にしないわ。地下スタッフ割で安かったし神父さんパック料金だったし」
『病めるときも健やかなるときも地下からの再生を果たしたのちも、永遠の愛を誓いますか』 
私たちは答えた。
「はい、地下います」

410文字

サクラバイトは桜の木の下からの出張組かもしれません。

「く響緑」の少年の両親の話です。

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