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「不思議ドライバー」D川編

 戦いは終結した。荒れた果てた町に一人の男がおりたった。戦後処理の使者である。戦火の薄靄のたつ岸辺で一心にツルハシを振り下ろしていた老人が振り返る。
「あんたマツカサはんか」
いや、少し違う。
「お主そこで何をしておる」
「水路を掘っております」
「良き考えじゃ。いずれここは日の本のヴェニス、マンハッタンとなろう」
「これは、わしが太閤様から請け負った事業でございます」
「完成する頃はわが外祖父様の時代じゃがな」
「あ、太閤様からお代はまだもろてへんかったわ」
そんなやりとりをしていると、何かがカツンとツルハシに。デカい。何とヒトガタではないか。よもや呪い人形ではあるまいな。掘り起こされた物体は白装束に白髪の恰幅の良い老人で穏やかな笑みを浮かべている。
「真に不思議なことで」

 だがのちに新大坂城主松平忠明はさらに不思議な事実に直面する。落城した大坂城の南西の堀を木津川まで繋げようとしていた道頓なる男は夏の陣で戦死していたのだった。

410文字

Mysterious D.river より

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