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半分ろうそく 140字呟怖編

配属先は戸籍係だった。デジタル化が進み担当職員は半減した。庁舎の地下室には市民の名が記載された火のついた多数の蠟燭。問合せ電話が鳴る。「もしもし、先日家族の死亡届を出しました。なのにまだ半分残っているってどういうこと?」話半分ですよ。「ろうそく」の真ん中半分とは言い切れず。#呟怖

140字

 だいたい人の一生を蠟燭に置き換えるなんて馬鹿げている。消したり点けたり継ぎ足したりなんてできるはずがないじゃない。仕事から解放され私は一人で缶ビールのフタを開ける。
そのときインターフォンが鳴った。職場の同僚で地域の自治会の人だ。
「どう、お母さん相変わらずなの? もう施設に入れたら?」
するといつものつれないトーンが
「帰ってもらいなさい」
と部屋に響きわたる。テレビに向かった後ろ姿だけの母。私の手元のスイッチから絞り出される音声だ。二ヶ月ごとの臨時収入は失いたくなかった。そして近所の人も青ざめて硬直した顔でいつものようにに帰って行くのだった。

合計408文字

たらはかに様のお題「半分ろうそく」をもとに#呟怖を書きました。
後半を合わせてショートショートです。

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