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噛ませ犬ごはん③ 大河編

 朝はまず特訓で始まる。眼前に大勢の犬が並んでいる。あんまり多過ぎてどれから噛んでいいかわからない。「早く!」師匠が促す。泣きそうになるが片っ端から噛みつく。私意外と大らか? すでにひらけ始めていた里でこんなふうに育てられた。ああそれなのに肝心の見合いの席でしくじった。後で発覚したのだがご飯粒がついたままだったのだ。さらに向こうから来た噛ませ犬が胡散くさかった。
「だからやめときゃ良かったのに」
はまだ優しいほうで
「後妻でのし上がる覚悟が足りん」
とか
「毒盛る相手を間違えたね」
とまで言われる始末。要するに女達には私の立場がいたたまれないのだ。私には目標があった。弱りかけた犬を次々と仕留め何食わぬ顔で実権を手にして悪女の名を恣にしたあの女。ここはすでに片田舎でなかったし実家はまあまあの家柄だったし何よりまだ若さがあったはずなのだ私には。やがてその手でその地に追いやられようとは。犬噛み家ではないが、のえの泣くのは遅ろしい。

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すでに放送終了しましたが一度「鎌倉殿」を検索したせいかnoteの記事がどんどん流れてくるようになりました。のえについて語っているものはあまり見かけないです。

たらはかに様のお題に参加しています。

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