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ビール傘

この映画を初めて見たのは誰とだったかな。そんな昔のことは忘れた。雨が降っていたから雨宿りをして見終わって外に出たらもう止んでいた。そのとき何かを忘れたかも知れない。
「この映画一緒に見たよね」
「それ元カノでしょ?」
「うん店に現れた女は別の男と一緒で元サヤかなーと思ったらやっぱり結ばれない話だったな」
「ごまかさないで」
「確かビールばっかり飲む客がいて嫌な歌を歌うから、お前ら祖国愛を思い出せ!と」
「それって私たちの敵国なの同盟国なの?」
「そのへんは曖昧だけどなんとなく悲しく終わる恋愛映画だよね」
「あっそう、私、実は見たことない。タイトルは昔の歌謡曲で知っただけ」
彼女は叫ぶと座席を立って外に飛び出した。
しまった。
ビールの酔いは醒めた。
おやこんなところに傘があるぞ。いつもの座席の脇。ずっと昔にぼくが忘れたやつだ。フラれたところにちょうど良かった。外で彼女が待っていた。ビールまだ醒めないから送ってよ。

400字

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