見出し画像

「二重人格ごっこ」秋物編

 ある本のタイトルを目にして思わず息が止まりそうになった。いわく、
『仏蘭西人は人格を10しか持たない』。
ひどい! 
人格(ペルソナ)はファッションのように流行、季節、状況に合わせて付け替えるのだが一つ間違えると、
「似合わない」
「何年前の?」
「場違い」
「みすぼらしい」
「汚れが目立つ」
などと笑われてしまう。何を隠そう私は一張羅着た切り雀のストレート人格だ。
ああ恥ずかしい。うじうじと『10しか』のレビューを読んでいると例によって「あなたにおすすめのサブスク」の広告が出現する。
「定額で何人格でも借り放題!お試しキャンペーン中」
 だがそのサービスを利用し始めてしばらく経ったころなぜか突然逮捕された。私が借りた人格を以前に着用した人物が強盗をはたらいていたというのだ。はたして人格には記憶が残っていた。
「ただのごっこ遊びですよ。普段と違う自分に扮して奪ったブツとはこれ(駄菓子)です」
私はカボチャをくり抜いた提灯を指差す。

408文字

たらはかに様の企画に参加しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?