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(元)伝書鳩パーティ

 あなたが生まれる前かも知れない。数羽の元伝書鳩が仲良くエサをついばみながら会話を交わしていた。もはや文書を足につけて運ぶというお役目から解放されて自由気ままにパーティ三昧だ。
「ねえ奥さま方、アタクシの先生をご存じ? 新聞記者に頼まれて下駄履きで池の鯉にエサをまくパフォーマンスを披露したけれど本当は鳩にだってエサを撒いてくださる気さくなお方よ」
残りの二羽はふうん、他にも色々ばら撒いてるのでは?と思った。
「アタシの先生は作家のお婿さんが大騒動起こして大変だったわ。有名な日本画家で今もアタシたちの絵を描いていらっしゃるわ」
すると最後の一羽が言った。
「分厚くて重たい総合誌の表紙で拝見したことがあるわ。あの重量を運ぶのは鳩には無理よね。ハトロン紙の封筒に入れて送らないと。ちなみに私の先生はジャーナリストで某人物の金脈と人脈に関する特集記事を執筆中なの。羽根ペンではないかも」
三羽はイチョウの葉を避けてエサを食べ続けた。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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