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心お弁当 五月晴れ編

 青葉が眩しい。
「初鰹の季節だな。おごるからタタキ食いに行こうよ」
ヤマダに声をかけられた。
「ありがとう。でも今日はお弁当があるからまた今度誘ってくれよ」するとヤマダの弁当持ちの奴らがワラワラと立ち上がり、
「付き合い悪いな。ベントくさいやつ」
と僕を睨んだ。だけど母さんを悲しませることはできないもの。
その夜、母が言った。
「いつまでもアタシなんかに気を遣うことないよ。友だちと仲良くやってくれるほうがずっと嬉しい」
母さんごめんね。僕は泣きそうになった。


「なあんてこと、アタシが言うとでも思ったかい? この馬鹿者。そもそもその弁当アタシの手作りなんかじゃないし。とはいえ、ヤマダの誘いを断ったのは上出来だ。ほめてやる」
そしてテレビをつけた。
『本日昼どき割烹の金庫が何者かに襲撃されました』
監視カメラの映像には明らかに見覚えのある人物が何人か写っていた。

そうだよ。僕はもう心を入れかえたんだ。

※弁当とは執行猶予の隠語だそうです。

410文字

ほっこり味をめざしました😅お題の言葉についてあらためて国語辞典を調べるといろいろ勉強になります。『隠語辞典』というのもありますね。でも一般にはあまり知られていませんよね? なにせ隠語ですから。

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