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立方体の思い出 息子は和解編

 暖かい温泉が恋しい季節になりましたね。あたしたちも白い肌をきらめかせながらお湯に浸かる夢を見ています。
 ガラスの部屋の外は明るい室内。すぐ傍にいる同僚と一緒に辺りの様子に注意を払います。

しっ、女がやって来たわ。
彼はスマホを置いて相手に自分の位置を示す。
君何か飲む?
ええと、ダージリンティーをいただきます。
二人は少しのあいだ沈黙する。
それでアキラは? 
母がみています。
フロア係が女の前に湯気の立つカップを置く。いくつ? 
きかれた女は怒りを示す。
ひどい人。自分の子の歳も忘れたの?まだ五つよ、手当は出るけど全然足りないわ。
周囲のお客さんが固まるのがわかる。
あ、いや砂糖だよ。君甘党だったよね。
女ははっとして顔を赤らめる。
ごめん覚えていてくれたのね。
口調が少しくだけている。
いやこっちこそ。借金は片付いたし賭事もやめた。
だから、やり直さないか。

甘いものはやめていたけど、と女はあたしと同僚をトングではさむと湯船に落とした。

409文字

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