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「カミングアウトコンビニ」①

 早いところ家族に本当のことを話さないと。そう思いつつ今日も私はこのコンビニでレジを打っている。役者をめざしていたが、やっともらえた漫才師役で「ング」と噛んでアウトになってコンビを外れてここで働いているのだ。
なんと突然母が店にやって来た。
「責任者呼んで」
「いるんでしょ隠れても無駄よ」
ひええ。
「ハイ、何でしょうか」
店長が対応してくれる。
「このお店、独立系で高級食材と輸入雑貨を扱っているという触れ込みだけど、本当は全国どこにでもあるチェーン店、いわばコンビニじゃないの、しかもあの悪徳企業の傘下。ハッキリと事実を世間に公表すべきだわ」
「お母さんお願いだからやめて」
トこの居場所まで失ってたまるものかと飛び出す。
「あら、あんた」、

「はいカット!」
監督のカチンコが鳴る。
ドラマ『カミングアウトコンビニ』の収録は順調だ。あとは公開に合わせてちょい役とはいえ私が便利に性的嗜好でもカミングアウトすればいくらかは話題になるはずだ。

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