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立方体のおもいで

 おじいさんが芝刈りをするあいだおばあさんは洗濯機にスイッチを入れて物干し台を拭いていました。座敷にあった真四角い段ボール箱がゴトンゴトンと鳴ります。あんなに小粒で少量なのにこんなに大きな箱?被せてあった発泡スチロールは燃えないゴミ?そもそも中身はもう食べてしまってもうないのだから。不審に思い不満な思いでうっかり禁を破って開けてしまいました。
「あんた誰」
子どもは答えず拾われた子犬や紛れ込んだ野生の猿や羽化した雉ともどもダンマリを決め込みます。
「あの人の隠し子と隠しペット?」
それを聞くと太郎は懐の刀に手をかけて
「成敗!」
と叫びました。そして再び箱に戻ります。幸い近所を走り去った車のドラレコにその様子が残っていました。
「せやから言うたやろサッサと処分してな邪魔やから」
おばあさんは得意げです。おじいさんは
「わしもだまされたんや、美味しい桃や言うさかい、」
そして照れかくしに一言。
「これ、おもいで」

400文字

手づくりビックリ箱か、座敷わらしか。

たらはかに様の企画に参加しています。

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