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見ましたので語ります

「消えた声がその名を呼ぶ」を見た。アルメニア人の虐殺をテーマにした映画だ。第一次世界大戦中に百万人あまりののアルメニア人がトルコ領内でトルコによって虐殺された。トルコはわが国の旧同盟国でもあるが、同時にイスラム教徒の国であり国内に幾つもの異民族を抱え位置的にヨーロッパ諸国や露西亜との地政学的要衝であった。一方アルメニア人の歴史は紀元前7世紀まで遡るといわれキリスト教独立宗派だ。大アルメニア主義を掲げトルコと露西亜領内で圧迫を受けていた。このへんの話は高校世界史の教科書ではほとんど触れられていない。「剣の舞」で知られるハチャトゥリアンやアメリカ人作家のウィリアム・サローヤンなどはアルメニア系である。
 映画は第一次世界大戦中に憲兵に自宅から連行された主人公が集団虐殺を免れて家族との再会を目指して何千里もの苛酷な旅をするというもの。予備知識なしで見てもわからなくはなかったが、他の家族がはどうなったとか、最後が呆気ない着地だったとか感じるかも知れない。が後で調べたらなるほどな、と感じた。アルメニア人のある意味逞しく強烈な一面も描かれている。またこの国のその後のなりゆきを知れば知るほど旧ソが抱えていたややこしい紛争が見えてくる。

参考文献 世界民族問題事典 平凡社

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