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「カミングアウトコンビニ」④

 地獄の業火に焼かれて口を割れば自供だ。カミングアウトとは違う。だがわしは今この場にあって敢えてカミングアウトをしよう。わが弟たち、すなわち血を分けた他人どもよ。お前らを○したから何だというのだ。アベルを○したカインに始まり兄弟○人なとザラにある話ではないか。わしは断じて涙など流さない、これは何か違うものだ。やたらとその時代の価値観を人物像に入れ過ぎるのはいかがなものか。

「おじさん、鎌○殿の13人の解説本前編残ってる?」
「あれってもう後半だろ? 洋さんの出番も済んで」
「えっないの。ママが佐○浩一さん好きなのに」
「店にはないけどセ○ンネットショッピングで探してごらん。菓子買うついでに受け取れるよ。めんどくさい再配○とかもないし」
「ダメだよおじさん、宅○便も仕事のうちだろ」
「こりゃ参ったな」

 店員の控室の片隅でわしの役者と弟の役者が楽しげに語らうページが開いている。鶏に転生したわしにもレンジの中からそれが見えた。

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