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イライラする挨拶代わり ①

 挨拶なんていいよ、愛があると察してるから要らないよ、そんなふうに夫は言いましたが。駅前でどこにでも売ってそうな菓子折りを適当に選び初めて彼の実家に泊まりがけで出かけました。
「まあまあ、これは珍しいものを」
義母はにこやかに出迎えてくれました。
 夕食は鯛によく似た魚の刺身でした。肉は柔らかくシットリ。聞けば伊良イラという魚だそうです。鮮やかな緑色の大葉の上に盛り付けられています。でもシソの香りはしないし表面がザラザラしています。
「うちの庭で採れたんよ」
素早く手元でグーグル検索すると刺草イラクサです。これはかなり手ごわいな。
 お風呂をいただいて部屋に戻ろうとすると義母と夫の話し声が聞こえました。
「土地は売らんよ」
「それにお前の席に花飾りよったこと、ウチは忘れんからな」
「いつの話だよ」

 やはり父による土地の買い占めの挨拶代わりと母が子ども同士の行き違いの挨拶代わりに持って行った菓子折りとかぶっていたのです。

410文字

たらはかに様のお題に参加しています。

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