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大増殖天使のキス

 あの頃は若かった。天真爛漫なあたしたちは近所の公園にたむろして遊んだ。ちなみに家は東京と千葉の真ん中あたりの広めの遊び場周辺だ。仲間はどんどん増えてだんだんと問題視する声があがってきた。路上でチュウとかしちゃうし。あたしのお気に入りの服は白くて白衣の天使とも呼ばれていた。
「ハクいペテン師だな」
そんなことを言うのはマイケルだ。
「いつかふたりで本場に行こうぜ」
それが彼の口癖だった。この人はみんなとどこかが違う。髪は黄金色で瞳はペールブルー言葉に微かな訛りがあった。
「わかるかい。オレあっちから来たのさ」
嘘つき、こっちで生まれたくせに。ある晩ふたりでLAのタグがついた大きなスーツケースにもぐりこんだ。公園で見たチャラい親子連れだった。
「エルエーは天使の街だからな」
父親が得意げに説明している。リムジンの運転士が
「荷物中身何ですか今チュウって」
「きゃあ白ネズミ!」
大増殖していたあたしたちの計画は画餅にキス。

404文字


実在の地名その他と無関係です。


たらはかに様のお題に参加しています。

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