朝の逆転④
お前たち、そんな隅っこにいないでこっちにおいでよ。採れたての美味い魚をあげようか? でも、たまには野菜も食べるんだよ。からだにいいからね。
妙だ。いやに優しい。様子がいつもと違う。将軍様がまたしてもおかしな御布令を出したのかしら。それともあんたたちの気がお触れなのかしら?
遠慮するなって。ほれ。こっちに来いよ。
「下にー、下にー」
おおっ出発だね。行き先は京都か。国道一号線だね。でもさ、橋の向きのせいかな? 東に向かっているような。そもそも根本的に、ボクらの位置がおかしい。なんで左下に描かれているの?
ほほう、よく見破ったね、この世界の秘密を。まず版木をデジタル写真に撮ってその上に色をのせたんだよ。だから左右が逆転していない。つまりいつもの世界とは反対なんだよ。
なるほど、それであんたたちも親切なんだね。
実は飢饉だった。東海道五十三次『日本橋』〈朝之景〉の版木の左下に彫られた犬と猫は歌川なかったが。
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