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「涙鉛筆」④

「お前少しは息抜きしたらどうなの?」
祖母いや母が働き過ぎのオレを気にしている。
でもさ、遊びに行くったって、どこにそんなお金があるんだよ、あのお宝だってもう使い果たしてしまったぜ。
「だったら『健民割』を使えばいいのよ」
母は朝刊の広告面を広げた。
「これなんかどう? 『島めぐり二泊三日、ハイクラス鬼のお宿に宿泊』」
小さい文字をよく見てよ、4名様ひと部屋料金だよ。やれやれ、またアイツらでも誘うか。
「それがいいわ、時代も変わってあの島の人たちもカタギでやってるみたいだし」

ところが宿に着いてみると。
「イラッシャイマセー」
ずらりと並んで出迎える従業員はなんと。鬼のお宿とは看板倒れの雀じゃねーかよ、おっとオレは雀だからって差別なんかしないよ、(でも雀の目にも涙とか言うなよ)
「くーぽんデース」
そんな。売店、何もないじゃん?
「ゴ当地名物、『鬼ニ金棒鉛筆』デース」
高い! これがこの値段とは!
雀たちは一斉に小さな瞳をウルウルさせた。

410文字

フィクションです。

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